ギリシャ国立東洋美術館所蔵の日本絵画調査から 第一回全体会(2011.2.25)
文部科学省「国際共同に基づく日本研究推進事業」採択 法政大学国際日本学研究所「欧州の博物館等保管の日本仏教美術資料の悉皆調査とそれによる日本及び日本観の研究」プロジェクト 第1回全体会 日時 2011年2月25日(金) 13:30〜16:30 会場 アルカディア市ヶ谷私学会館7階 会議室「雲取」
ヨーゼフ・クライナー研究代表 会場の様子
クリスティアン・シュタイネック氏 智恵・シュタイネック氏
法政大学では、平成22年度文部科学省「国際共同に基づく日本研究推進事業」における研究プログラムに国際日本学研究所のプロジェクト「欧州の博物館等保管の日本仏教美術資料の悉皆調査とそれによる日本及び日本観の研究」が採択され、2011年10月1日から本格的な研究が始動しております。このプロジェクトでは、彫刻、絵画、書、法具、及びお札を中心とする日本仏教美術を研究の対象とします。なお、お札の調査・研究は、既にフランス国立科学センター教授・法政大学国際日本学研究所客員所員のジョセフ・キブルツ先生によって進められており、そのデータベースとのリンクは近いうちに可能になる予定です。更に、袈裟などの染織の分野も調査・研究の対象としなければならないことも、このプロジェクトの研究を始めてから新たに確認されました。 2011年2月25日に研究メンバーが一堂に会して、初めての全体会を開きました。まず全員で確認したのは、優先的な課題である悉皆調査で把握した仏教美術のデータ化についてです。このデータベースは広く一般にも公開するとともに、データは将来にわたって追加し、データベースを更新していくことも再確認致しました。つづいて、ヨーロッパ側で協定を結んでいるチューリッヒ大学のクリスティアン・シュタイネック氏から、チューリッヒ大学にとっての本研究プロジェクトの重要性についての説明がありました。シュタイネック氏によれば、チューリッヒ大学と本学との研究協定は本研究によって初めて活性化し、ヨーロッパにおける日本仏教美術及び仏教の研究が活性化するということです。また、欧米の日本研究からみると15年前から「モノ」資料への関心が高まっており、これは仏教研究においても顕著であること、チューリッヒ大学は、自らの予算から本研究に必要なインフラを提供し、資金確保にも力を入れ、助手2名を雇用することが報告されました。次に、調査・研究にあたっている法政大学国際戦略機構特任所員(次年度から籍は法政大学国際日本学研究所に変わる)の智恵・シュタイネック氏から、ヨーロッパでの調査の経過と現状について報告がありました。本学の安孫子所長名義でヨーロッパの120ヶ所以上の博物館・美術館に協力依頼をし、そのうち既に6割から回答が寄せられました。そのほとんどが本研究を歓迎し、協力する、あるいは資料を提供するという好意的なものでした。既に資料を提供頂いた館もあり、智恵・シュタイネック氏は今年2月までにロンドンで3ヶ所(大英博物館、ビクトリア・アンド・アルバート工芸美術館、ホーニマン博物館)、ノーウィッジで1ヶ所(セインスベリー美術研究所)、ベルリンで2ヶ所(東洋美術館、民族学博物館)、ベルンで1ヶ所(スイス歴史博物館)、パリで3ヶ所(ギメ国立東洋美術館、ツェルヌスキ・パリ市立東洋美術館、ケーブランリ海外美術館)、プラハで2ヶ所(国立東洋美術館、ナプルステック民族学博物館)の現地調査を終了しました。多くの場合、面談を求めたことが直接良い結果に繋がっております。パリ・ギメ以外のヨーロッパの博物館・美術館には、仏教美術の専門家はおりませんし、日本専門の学芸員さえも少ないため、資料が不揃いという現状を踏まえ、改めて写真撮影等を行う必要があります。その現状に鑑み、3月初めには本学が集積した質問票(エクセルデータベース)をご協力頂いた博物館に送付します。また、クリスティアン・シュタイネック氏は、チューリッヒ大学の予算でポーランドのワルシャワ大学、ボズナン大学の日本学・日本美術史関係者・日本美術関係者との協議を進め、現地での日本仏教美術に関する情報収集をポズナン大学が遂行するという約束を交わされています。更に智恵・シュタイネック氏の下で、チューリッヒ大学のスタッフが今まで出版された仏教美術コレクションに関する展示会図録などの書籍を収集し始めました。それも一つの情報源としています。 この全体会での討論は、質問票(エクセルデータベース)の充実化に集中しました。また、研究陣の幅を広げる必要があることも確認され、東京国立博物館の島谷氏を中心に、京都国立博物館、奈良国立博物館、東京国立文化財研究所の各機関との連携にあたることになりました。 2011年度の前半ではまずデータベースの充実化を進め、6月に第2回の全体会、7月に美術の専門家の研究会を開催し、次の課題について検討することを決定致しました。 【記事執筆:ヨーゼフ・クライナー(法政大学国際日本学研究所兼担所員、国際戦略機構特別教授)】
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