事業紹介
1.概要
申請分野 | 人文科学 |
---|---|
拠点のプログラム名称 | 日本発信の国際日本学の構築(Declaration of International Japan-Studies) |
研究分野 | 日本文化 |
キーワード | 異文化・国際化・ネットワーク・メタサイエンス・比較研究 |
専攻等名 | 大学院国際日本学インスティテュート、人文科学研究科日本史学専攻・日本文学専攻、政治学研究科政治学専攻、国際日本学研究所、野上記念能楽研究所、沖縄文化研究所 |
2.事業推進担当者
名前 | 肩書き | 専攻 | 学位 | 担当 |
---|---|---|---|---|
星野 勉 (拠点リーダー) |
人文科学研究科哲学専攻・教授/国際日本学研究所長 | 哲学、倫理学 | 文学修士 | 全体統括 テーマタスクフォース1(国際日本学の理論構築とタスクフォース間の連携) |
勝又 浩 | 人文科学研究科日本文学専攻・教授 | 日本近現代文学 | 文学修士 | テーマタスクフォース1(国際日本学の理論構築とタスクフォース間の連携) テーマタスクフォース2(西欧(独・仏)・中国の日本文化研究の総合的研究) |
青木 保 | 国際日本学研究所客員所員 | 文化政策、文化人類学 | 人間科学博士 | テーマタスクフォース1(国際日本学の理論構築とタスクフォース間の連携) |
川村 湊 | 人文科学研究科日本文学専攻・兼担教授/国際文化学部・教授 | 文芸批評、日本近現代文学 | 法学士 | テーマタスクフォース2(西欧(独・仏)・中国の日本文化研究の総合的研究) |
田中 優子 | 社会学部・教授 | 近世文学、比較文学 | 文学修士 | テーマタスクフォース2(西欧(独・仏)・中国の日本文化研究の総合的研究) |
安孫子 信 | 人文科学研究科哲学専攻・教授 | フランス哲学・フランス思想史 | 文学修士 | テーマタスクフォース2(西欧(独・仏)・中国の日本文化研究の総合的研究) |
王 敏 | 国際日本学研究センター教授 | 日中比較、日本研究 | 人文科学博士 | テーマタスクフォース2(西欧(独・仏)・中国の日本文化研究の総合的研究) |
ヨーゼフ・クライナー | 企画・戦略本部特任教授 | 日本文化研究 | 文学博士 | テーマタスクフォース2(西欧(独・仏)・中国の日本文化研究の総合的研究) テーマタスクフォース4(国際沖縄学の構築) |
高 増杰 | 国際日本学研究所・客員所員/中国社会科学院日本研究所副所長教授 | 思想史、日本学 | 文学博士 | テーマタスクフォース2(西欧(独・仏)・中国の日本文化研究の総合的研究) |
ジョセフ・A・キブルツ | 国際日本学研究所・客員所員/パリ第10大学・教授/コレージュ・ド・フランス日本学高等研究所主任研究員 | 文化人類学、民族学、宗教学 | 文学博士 | テーマタスクフォース2(西欧(独・仏)・中国の日本文化研究の総合的研究) |
澤登 寛聡 | 人文科学研究科日本史学専攻・教授 | 日本近世史 | 文学博士 | テーマタスクフォース2(西欧(独・仏)・中国の日本文化研究の総合的研究) |
西野 春雄 | 人文科学研究科日本文学専攻・教授/能楽研究所長 | 能楽研究 | 文学修士 | テーマタスクフォース3(世界の中の能楽) |
山中 玲子 | 人文科学研究科日本文学専攻/国際日学インスティテュート兼担教授/能楽研究所教授 | 能楽研究 | 文学博士 | テーマタスクフォース3(世界の中の能楽) |
スティーヴン・ネルソン | 人文科学研究科日本文学専攻・教授 | 日本音楽史 | 芸術学修士 | テーマタスクフォース1(国際日本学の理論構築とタスクフォース間の連携) テーマタスクフォース2(西欧(独・仏)・中国の日本文化研究の総合的研究) テーマタスクフォース3(世界の中の能楽) |
安江 孝司 | 法学部・教授 | 社会学 | 社会学修士 | テーマタスクフォース4(国際沖縄学の構築) |
飯田 泰三 | 沖縄文化研究所長/政治学研究科政治学専攻・教授 | 日本政治思想史 | 法学博士 | テーマタスクフォース1(国際日本学の理論構築とタスクフォース間の連携) テーマタスクフォース4(国際沖縄学の構築) |
吉成 直樹 | 沖縄文化研究所・教授 | 地理学 | 理学博士 | テーマタスクフォース4(国際沖縄学の構築) |
3.拠点形成事業の概要
(1)拠点形成の目的と事業内容の全体的概要
本拠点形成の目的は、日本文化という対象について理解の共通の基盤を探求することを通じて、国際的に通用する日本学=日本研究を構築することにある。国外においても日本や日本文化への関心は高まっているが、そこにはしばしば誤解も見受けられる。また、国内の日本(文化)研究は、方法論的な意識の欠如と内向き志向とのゆえに、国外の人々(研究者)にとって必ずしも開かれたものとなっていない。私たちが国の内外に開かれた「国際日本学」の構築が必要であると考える理由はここにある。
「日本発信の国際日本学の構築」にあたり、私たちは「自文化」をあえて「異文化」視するというスタンスをとる。国外の研究者が日本文化を研究する場合それを「異文化」として考察するが、私たちは、国外の研究者の視点を私たち自身の視点と摺り合わせ、日本(文化)理解の差異を際立たせると同時に、その差異の意味の解明を通じて、自文化研究が陥りがちな狭隘さから脱却する方法(「メタサイエンス」)を確立すると同時に、国際的に通用する「日本研究(日本学)」を構築することを目指している。
「メタサイエンス」とは、日本文化に関する「国内外の学問的な対話」が成立する条件を究明し、日本文化という対象をめぐる研究(日本学)の共通の基盤を確立する学であるが、その意味において「学の学」であると言いうる。この「メタサイエンス」の導入によって、「異文化研究としての日本学」、「日本文化の国際性」という視角が開かれるばかりか、国内の日本文化研究に見られる狭隘さから脱した、世界に通用する日本文化研究の国際的なスタンダード(=「国際日本学」)の構築が現実的なものになると考える。
「野上記念能楽研究所」と「沖縄文化研究所」での研究蓄積についても、それをより広範な日本文化研究のための糧としつつ、国際社会に開かれた能楽研究や沖縄学研究のあり方を模索することによって、この面からも日本文化研究の国際化をはかる。
「異文化」視するという視点から日本文化を見直してみると、「日本」というかたちでひと括りすることを許さない、国境を超えた拡がりや歴史的な重層性のもとに、その多様な相貌が現われてくる。私たちは、日本は単一の民族からなる文化的にも均一な社会であるというこれまでの見方・考え方に対して、日本文化の国際性、重層性、多様性に着目することによって、その特殊性と普遍性を解明していく。
ITを最大限に活用して、これらの研究成果をWEBを通じて世界に発信すると同時に、ネットワークを通じて国内外の研究機関・研究者とリアルタイムに研究情報を共有しながら共同して研究を推進し、日本文化研究の国際的な研究教育拠点の形成をめざす。
(2)各タスクフォースの事業内容の概要
タスクフォース1:課題:国際日本学の理論的構築とタスクフォース間の連携
主:星野、副:勝又、分担者:青木、ネルソン、飯田
* 国際日本学研究センターが担当する。
1)メタサイエンス(方法論)の確立とその具体的な適用
2)タスクフォース間の連携と国際日本学の理論的構築
タスクフォース2:課題:日本文化研究の総体的研究
主:クライナー、副:勝又、分担者:川村、田中、安孫子、王、高、キブルツ、澤登
*国際日本学研究所が担当する。
1)外国(独・仏・中に限定)の日本文化研究の分析・評価
2)日本認識の差異(ずれ)の究明と共通の基盤の探究
タスクフォース3:課題:世界の中の能楽
主:山中、副:西野、分担者:ネルソン
*野上記念能楽研究所が担当する。
1)外国の能楽研究の分析・評価
2)グローバルな文化遺産としての能楽研究
タスクフォース4:課題:国際沖縄学の構築
主:安江、副:飯田、分担者:吉成、クライナー
*沖縄文化研究所が担当する。
1)琉球・沖縄の基層文化形成と文化的アイデンティティの研究
2)国際日本学構築のための戦略的拠点としての国際沖縄学の構築
(3)教育実施計画
本拠点は、拠点専攻(人文科学研究科日本史学専攻、同日本文学専攻、政治学研究科政治学専攻、野上記念能楽研究所、沖縄文化研究所)に加えて、本拠点独自の教育活動の展開拠点として、「国際日本学インスティテュート」を設置した。
「国際日本学インスティテュート」は、人文科学研究科の日本文学・日本史学・地理学専攻を中心に、日本学関連領域を研究する政治学研究科政治学専攻・社会学研究科社会学専攻において、日本学を学ぼうとする大学院生を募集し、その学生を各専攻から預かる形で教育を展開する、新しい大学院教育組織である。そのねらいは、教員、学生ともに、旧来の研究科、専攻の枠にとらわれずに、広い角度から日本を研究し、教育しようとするものである。初年度である2003年度は修士課程のみの開設で、現在研究教育活動を展開しているが、修士課程の完成年度を待たずして、2004年4月より博士後期課程を開設した。文部科学省への申請もすみ、学位(博士号)は「博士(学術)」を認められた。
「国際日本学インスティテュート」は、COEプログラムの基本コンセプトである「異文化研究としての日本学」「日本文化の国際性」を堅持するが、その特徴は次の点にある。
- 既存の専攻分野にとらわれず、広い角度から日本を研究・教育する。
- 一般学生のみならず、留学生および社会人の受け入れを積極的に行う。
- 外国から世界的研究者を迎え、研究・教育の面での積極的参加を図る。
- 国内外に構築したネットワークを通じての遠隔研究・教育を行う。
- フィールドワークを重視する。
- インターンシップ制を採用する。(博士課程・海外を奨励)
- 研究と教育とを一体化して推進する。
- 研究教育領域としては、以下の領域に振り分け、国際日本学のカバーすべき領域を網羅した。
1群:日本学 2群:アジアの中の日本 3群:伝統文化と民衆世界
4群:風土が作る文化 5群:もう一つの日本 6群:日本の美と芸能
以上のようにカリキュラム上の新基軸を打ち出すなど、「国際日本学インスティテュート」は日本学の研究・教育拠点としては他に類を見ないものである。なお、すでに国際日本学研究所では、選抜されたインスティテュートおよび拠点専攻博士後期課程生を研究所学術研究員として迎え入れ、研究奨励金を支給すると同時に、共同研究に着手している。その研究成果の一部が国際日本学研究所紀要『国際日本学研究』である。