第2回(2016年)

第2回ヨーゼフ・クライナー博士記念・法政大学国際日本学賞

 

◆受賞者

 Luke Gartlan(ルーク・ガートラン)氏 (セント・アンドリュース大学)

◆著書タイトル

 A Career of Japan:  Baron Raimund von Stillfried and Early Yokohama Photography (Brill, 2016)

20170117kuraina

◆SUMMARY

  A Career of Japan: Baron Raimund von Stillfried and Early Yokohama Photography (Brill, 2016) は、19世紀の日本における重要な一人の写真家を取り上げた最初の研究である。ライムント・フォン・シュティルフリート男爵は明治時代の外国人写真家の中で最も重要な人物であるだけでなく、当時としては最も国際的に活動した写真家であった。シュティルフリートは日本の印象を世界に広め、明治時代の日本社会に写真の撮影を普及させる点で中心的な役割を果たした。シュティルフリートは世界旅行の途上で日本の写真を盛んに撮影し、1870年代から1880年代にかけてヨーロッパや米国、オーストラリア、インドで開かれた主要な展示会に写真を出品した。シュティルフリートは明治政府に雇われ、アイヌの習俗と北海道の近代化の様子を写真に収めた。また、東京の印刷局にも写真術の専門家として出仕し、さらに横浜に設けた自らの写真館で多くの日本人に写真術を教授した。  しかし、明治時代に様々な文化を横断したシュティルフリートは重要であるにもかかわらず、シュティルフリートの活動や旅行、社会的な繋がり、あるいは絵画作品についての体系的な研究は、日本と西洋の双方の学問にとって根本的な空白であった。本書は現在の学界の空白に取り組み、明治時代における横浜の写真産業の重要性についても全く新しい視点から検討を加えている。世界各国で保存されている資料のうち、新出の一次資料や未刊行の書類などに基づき、本書は、明治時代の日本における文化的媒介者としてのシュティルフリートの極めて重要な役割を調べ、彼の社会的環境を構成し、より広いすべての文化に共通の仕事や個人的な関係を検討している。本書が描くのは、横浜で国際的に発展した写真産業を下支えした緊張感と激しい競争であり、その過程で日本の視覚文化、ハプスブルク家研究、さらには写真とグローバル化に関する異文化交流の歴史について重要な問題を提起している。

 

◆授賞式および記念講演会を2017年1月17日(火)に開催いたしました。詳細はこちら

 

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