王秀文教授の法政大学国際日本学研究所訪問(2009.4.22)

王 秀文教授の研究所訪問

・日 時: 2009年4月22日(水)18時30分〜20時30分

・場 所: 法政大学国際日本学研究所

090422oushubun.jpg

左より安孫子所長、星野センター長、王秀文教授ご夫妻、王敏教授

 

【中国、大連民族学院における異文化コミュニケーション研究・教育】

中国の大連民族学院(大学)国際言語文化研究センター長である王秀文氏が、2009年4月22日に本学を訪問し、徳安彰・常務理事、林公美・国際交流センター長、廣岡康久・同交流センター課長ほかと両大学の交流について有意義な意見交換した後、星野勉・常務理事、安孫子信・国際日本学研究所所長、王敏・同研究所専任所員・教授と会談の機会をもった。

大連民族学院は、中国東北地方の沿海都市大連にある大学である。中国の大学は一般的には教育部に属するが、大連民族学院は国家民族委員会に属する国立総合大学として、多民族中国ならではの特色ある教育と研究を実践している。工学、理学、経済学、管理学、文学、法学にわたる37の学科を有するほか、外国人留学生教育を担当する国際交流学院を設置している。

大連民族学院の外国語言語文化学院は、日本語学科、英語学科、韓国語学科、及び教養科目としての大学外国語学部があり、語学と日中異文化理解・異文化コミュニケーションを教育の特色としている。今回本学を訪問した王秀文氏は、外国語言語文化学院の創設者であり元院長でもあることから、大連民族学院における日中異文化理解・異文化コミュニケーション、ならびに日本語・日本文化の教育・研究事情についての詳細な説明をされた。

王秀文氏の紹介によれば、大連民族学院における日中異文化理解・異文化コミュニケーション研究は、大学改革と関連させた高度な次元から実施されているという。学院には研究施設として国際言語文化研究センターが設置されており、その傘下に日本文化研究所、東北二宮尊徳研究所、翻訳と比較文化研究所があり、現在は日本企業文化研究所の設置が考案中であるという。隔年開催の国際シンポジウムや各年開催のフォーラムなど、研究交流も活発に開催されているほか、学術論文集『東方論叢』を刊行している。

また、外国語文化学院の日本語学科は、大学の重点学科、師範性学科、教育部特色建設点学科、国家民族委員会重点学科、遼寧省師範性学科として登録されており、中国における日本語・日本文化教育基地として国内外から注目されているという。日本の大学との協力関係も緊密であり、北陸先端科学技術大学院大学、秋田大学、桜美林大学、福岡国際大学、金沢星稜大学への研究生、大学院生の派遣などを行っている。

大連民族学院の斬新な取り組みに対しては、日ごろより当研究所の王敏専任所員・教授も非常に注目しており、具体的に以下の点についての指摘を行った。1.日中異文化理解・異文化コミュニケーションへの取り組みを大学改革として位置づけ、大学内の研究・教育機関を拡充させている点、2.若い世代の人材育成の一環として、日中異文化理解・異文化コミュニケーションを重視している点、3.北京オリンピック開催の際に、異文化理解の重要性が強調されたが、そうした国家的取り組みに連動させている教育理念、4.王秀文氏の研究成果を、本学発行の『21世紀COE国際日本学研究叢書5相互理解としての日本研究——日中比較による新展開——』(2007年3月)、『日中文化の交差点』(2008年3月)に掲載するなど、本学との活発な研究交流の実績。以上4点について、王秀文氏と意見交換を行った。

星野勉・常務理事、安孫子信・国際日本学研究所所長からも、大連民族学院と本学との一層の教育・研究交流関係の強化を期待する旨の有意義な意見交換がなされた。今回の会談により、大学間の交流主軸を中心に双方の研究所における1.国際シンポジウム開催の協力、2.相互の論文集の執筆・編集への協力、3.相互の研究プロジェクトへの協力、4.相互の研究調査・研究員派遣への協力、5.定期的な研究発表・学術講演開催への協力、などについて具体的な話し合いが行われた。出席者は両研究所の協力の一層の発展についてあらためて確認し合うことができ、会談は実り多いものとなった。大連民族学院と本学との今後一層の交流強化を期待したい。

【記事執筆:王敏(法政大学国際日本学研究所教授)】