【開催報告】国際交流基金・法政大学国際日本学研究所・法政大学ESOPプログラム 共催 「エズラ・ヴォーゲル氏と考える日本研究の未来」2022年7月16日(土)2022/08/09
【開催報告】
国際交流基金・法政大学国際日本学研究所・法政大学ESOPプログラム 共催
「エズラ・ヴォーゲル氏と考える日本研究の未来」
■開催日時
2022年7月16日(土)13:10〜15:10
■会場
法政大学 外濠校舎4F S405教室
■参加者
ESOP授業 Global and Transnational Japan受講生
■コメンテーター
マックス・ワード(ミドルベリー大学准教授・国際交流基金フェロー)
アレクサンドラ・ローランド(デュースブルグ・エッセン大学博士候補生・JSPS外国人特別研究員)
■運営・司会
国際交流基金・日本研究部
髙田 圭(法政大学国際日本学研究所・専任所員)
去る2022年7月16日、国際交流基金ならびに国際日本学研究所による共催で「エズラ・ヴォーゲル氏と考える日本研究の未来」を開催しました。本イベントは、国際交流基金が公開した、日本研究界の巨人であるエズラ・ヴォーゲル氏のドキュメンタリー映像を、本学ESOPプログラムの授業Global and Transnational Japanの受講生と視聴し、日本研究支援を推進する国際交流基金のスタッフの方々とともに、日本研究のあり方や意義について議論するものでした。またゲストとして歴史学者で米国・ミドルベリー大学准教授のマックス・ワード氏をお迎えし、HIJAS外国人客員研究員のアレクサンドラ・ローランド氏とともに、解説を交えながら受講生とディスカッションをしていただきました。
今回、参加者とともに視聴した2022年5月に公開されたばかりのドキュメンタリー映像は、累計70万部のベストセラーとなった『ジャパン・アズ・ナンバーワン』執筆へといたる背景を中心に、ボーゲル氏の社会学者としての日本との深い関わりやその人となりに迫る見応えのある作品となっています。受講者には、作品への感想を聞くとともに「ヴォーゲル先生がご存命なら今の日本をどう評するか」などの問いを投げかけ、グループでの討論をおこなってもらいました。そこにゲストや国際交流基金の方々のコメントが加わり、2時間にわたる英語での充実したディスカッションが展開されました。
受講者の地域・文化的背景は欧州、アジア、日本と多岐にわたり、当然それぞれの日本観は異なるものでしたが、共通していたのはそのほとんどが『ジャパン・アズ・ナンバーワン』を手にしたことがない学生ばかりだったことです。ソトの視点から日本を眼差す留学生たちにとっては、今回の映像作品を通じて、彼(女)たちが見聞きしたポジティブな日本イメージの源流を知ることになったようです。他方で、むしろボーゲル氏の日本に対する高い評価を驚きを持って迎えたのは、日本語ネイティブの受講生たちでした。バブル期以降に日本で(または日本と海外を行き来しながら)生まれ育った彼(女)たちにとっては、1970年代末に米国の社会学者の仕事をきっかけに、日本がまさに「アメリカへの教訓(Lessons for America)」をもたらす存在として突如高い注目を集めたことそれ自体が新鮮に映ったようです。
ボーゲル氏のドキュメンタリー映像は、こうしてウチとソト、そして過去と現在の視点を交錯させながら世代をまたいで日本を理解する、まさに国際日本学を探求するためのとても有益な作品となっていました。国際交流基金の方々から投げかけられた「日本にとって海外の日本研究者を育てる意義/メリットは何か」というもう一つの大きい問いについては、時間的制約から十分に議論をし尽くすことはできませんでしたが、今後も継続して考察していくべき重要なテーマです。
髙田 圭(法政大学国際日本学研究所・専任所員)
会場の様子