【研究所訪問】明治大学日本古代学研究所の本研究所訪問(2019年7月3日)2019/07/05
日時:2019年7月3日(水)
場所:法政大学国際日本学研究所(HIJAS)所長室
2019年7月3日夕刻、明治大学日本古代学研究所において公開されている「墨書・刻書土器データベース」構築を主導するメンバーがHIJASを訪れて、文系のデータベースをめぐる諸環境について情報交換を行った。
来訪者は、吉村武彦氏(明治大学名誉教授)、加藤友康氏(元明治大学大学院特任教授・東京大学名誉教授)、矢越葉子氏(明治大学研究推進員)、田中美幸氏(明治大学日本古代学研究所スタッフ)の4名である。
明治大学日本古代学研究所作成の「墨書・刻書土器データベース」は、全国の遺跡で発掘された出土文字資料のうちの大半を占める墨書土器や刻書土器の集成を図るもので、一点一点だけではその利用が困難な土器の墨書や刻書を一堂に会することによって、その資料価値を一気に高める可能性がある。日本古代史研究のための新しい文字資料として注目されているものである。
これまでは県別にファイルメーカーやエクセルのスタンドアロン形式のファイルを提供し続けてきているが、2011年からはそれを統合した「全国墨書土器・刻書土器、文字瓦 横断検索データベースのオンライン版(試行版)」を公開している。
これはファイルメーカーのインスタントWeb公開の機能を利用したもので、HIJASでも「在ベルリン吐魯番出土漢文世俗文書総合目録(小口雅史編)」の公開において利用している。ファイルメーカーはスタンドアロン版で作成したものをそのままWeb公開できるのが強みで、明治大学日本古代学研究所がデータベース構築時に私が意見を求められ、ファイルメーカーを一案として提示したこともあった。
当初はHIJASのJBAEデータベースもファイルメーカーによって公開していたが、現在では諸般の理由により、それは汎用スクリプト言語のPHP(Hypertext Preprocessor)によって構築されている。
今回の来所の目的は、文系のデータベースの維持環境をめぐる諸問題について意見交換したいとのことで、お互いにこれまで長期にわたって維持管理してきたデータベースを今後どうするかをめぐって、様々な可能性を検討した。
明治大学日本古代学研究所のデータベースは「私立大学学術研究高度化推進事業(学術フロンティア推進事業)」「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」、科研費で支えられてきたようであるが、HIJASのデータベースも全く同様である。
ただHIJASは本学に11ある付置研究所の一つで、基本的に大学からの経常経費が存在する。これはやはり大きな違いで、データベースを維持運営する上でも、母体がしっかりしていることは重要前提条件であることで意見が一致した。
今後とも引き続き、理系とは異なる特徴を持ち、維持管理が常に問題となる文系データベースをどう展開していくかについて、お互いに知恵を絞りながら研究を続けていくことを約束して散会となった。
【記事執筆:小口 雅史(法政大学国際日本学研究所所長、文学部教授)】
(前列左より加藤氏、吉村氏、小口雅史所長。後列左より矢越氏、田中氏)