第4代所長ご挨拶(2014年4月当時)
「所長就任にあたって」 2014年4月 本研究所は、文部科学省21世紀COEプログラムに「日本発信の国際日本学の構築」が、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業(学術フロンティア推進事業)に「日本学の総合的研究」が同時に採択された2002年に設立されました。以来、研究面で本学既設の2 研究所—野上記念能楽研究所、沖縄文化研究所—、研究者育成面で大学院国際日本学インスティテュートと連携し、国際日本学研究センターの統括の下、上記両事業を精力的に推進しました。 これらのプログラムが終了した2007年からは、同じ学術フロンティア部門で、それまでの成果を引継ぎ発展させる形で、新プログラム「異文化研究としての日本学」が採択され、やはり他の2 研究所と結んで、国際日本学の引き続きの構築に取り組んできました。このプログラムも成功裡に終了した後は、文部科学省による新たな「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」(2010年度〜2014年度)に、「国際日本学の方法に基づく〈日本意識〉の再検討—〈日本意識〉の過去・現在・未来」が採択されました。本研究所では、現在はこの事業を中心として研究活動を遂行しております。 なお国際日本学研究センターは2013 年3 月31 日をもって廃止となりましたが、それはこれら4つの機関が独自に活動しつつ、他方で互いに連携していくことが着実に実現されたことにより、協働のための上位機関を置いておく必要がなくなったと判断されたからでした。こうして、国際日本学研究所は、独自の力で他の3機関との連携を模索しているところでもあります。 さて本研究所設立以前にも、「日本学」なる研究分野はもちろん広く世界各地に存在しました。例えばドイツではJapanplogieと呼ばれる学問分野です。つまり「日本学」そのものは外国産であって、ある言語圏で、日本の何らかの文化現象を対象に行われている学問研究が、その言語圏ではすべてまとめて「日本学」の名で呼ばれてきましたし、それは今でも変わりません。そこには文学・哲学・社会学・政治学・人類学といった人間諸科学の多様な観点が共存しているのが普通です。このように「日本学」はもともと、それぞれの地域で学際的に開かれた存在でした。そこでこのような各地での「日本学」を結びつけ、それらにさらに国際的性格を付与することで、「日本学」総体に新たなダイナミックな展開をもたらすことを目指して、法政大学の提唱の下に立ち上げられたのが「国際日本学」です。本研究所は設立当初から、この新しい研究分野である「国際日本学」の学問としての確立、あるいはメタサイエンスとしての「国際日本学」の確立に努めてきました。私以前に2代続けて哲学を専門とする研究者が所長の任に着いたのは、こうした経緯からすれば当然のことでありました。こうした試みは着実に成果をあげてきたと私どもは自負しております。私は歴史学を専門とする者ですが、私がこのたび所長に選ばれましたのは、こうした経緯を踏まえて、これからは徐々に方法論の確立からさらに各分野の内実を具体化することへの転換が期待されているのだと思います。 世界各地における「日本学」は、日本の経済的地位の低下とともにかつての勢いは失われているとも言われています。実際問題として、例えばドイツの大学では日本学のポストが減りつつあります。こうした時代にあって、「国際日本学」は日本における日本研究の諸成果が、より多量に、あるいはより直接的に国際社会に発信されるものであって、世界各地での「日本学」の活性化、あるいは日本文化への新たな関心を喚起していくことに貢献できるはずです。「国際日本学」によって日本の各分野の専門の研究者が、一国主義の殻に閉じこもり、これまであまり交流を持たなかった海外の研究者と接して、「外から見た日本」というきわめて刺激的、文化的インパクトをうけ、それがまた日本人の日本研究にも反映していくという研究の好循環が期待されます。 このように双方向に研究を開くことで、「国際日本学」は、グローバリゼーションが進行する現世界下における、日本文化の特殊性と普遍性の見直しおよび再発見、すなわち日本人研究者だけでは分からない真の日本理解が可能になっていくはずです。これからは名目だけではない、こうした「真の協業」を目指していきたいと考えています。 なお最初に申し上げました「国際日本学の方法に基づく〈日本意識〉の再検討—〈日本意識〉の過去・現在・未来」は今年度が最終年次です。これまで、 法政大学国際日本学研究所長 |