国際共同に基づく日本研究推進事業「欧州の博物館等保管の日本仏教美術資料の悉皆調査とそれによる日本及び日本観の研究」
文部科学省「国際共同に基づく日本研究推進事業」
「欧州の博物館等保管の日本仏教美術資料の悉皆調査とそれによる日本及び日本観の研究」
平成22年度~平成24年度(2010年度~2012年度) 研究代表者:ヨーゼフ・クライナー
「国際共同に基づく日本研究推進事業」は平成22年度より文部科学省で開始された事業である。海外に存在する「日本」に関係する様々な資源を活用した「日本研究」の国際共同研究を推進することにより、新たな知見の発掘による日本研究の進展、国際ネットワークの構築等による日本研究の活性化、国際ネットワークの活用による日本研究の持続的発展とともに、我が国の人文・社会科学研究の国際化の促進に資することを目的としている。
本プロジェクト「欧州の博物館等保管の日本仏教美術資料の悉皆調査とそれによる日本及び日本観の研究」は、平成22年度に「国際共同に基づく日本研究推進事業」に採択された。
研究の目的・意義
2003年に、ヨーゼフ・クライナー博士が中心となって開催した、全欧州の博物館の日本美術コレクションの担当者を結集した初の国際シンポジウムにおいて、日本美術コレクションを保管している欧州の博物館のネットワークENJAC(European Network of Japanese Art Collections)が設立され、喫緊の課題としては、欧州の多くの博物館・美術館が保有する膨大な日本仏教美術コレクションの研究が想定され、欧州側の研究受入態勢が十分に整ってきていた。
そこで本研究では、全欧州の博物館・美術館を対象に、その保管する仏教美術品の詳細なリストと、できるだけ精密な写真を収集し、画像付データベースとして世界に発信する態勢を構築することを最優先の課題として設定した。収集した情報については、まずは日本側の共同研究者間で検討会を繰り返し、情報を整えながら、その成果を公開データベースなどを通して欧州側に還元することによって、欧州における日本仏教美術を相互に参照でき、研究素材として十分利用できるネットワークを整えることを目指した。さらにそれらの活動を通しての、新たな日本美術研究者の育成にも努め、また日本仏教美術作品の管理・保管技術の向上をも図ることとした。最終的には、ポーランドで総括シンポジウムを開催し、欧州における日本仏教美術コレクションの特徴を解明し、それを通して欧州からみた日本像をより豊かに描き出すことを試みる。またその成果は英語版で欧州で出版することとし、それを日本仏教美術研究の欧州における基本的文献として普及させることをも目的とする。
以上のように、これまでこの分野の専門家がほとんどいない地域を主たる対象に、初めて本格的な調査のメスを入れるもので、欧州に流出した日本仏教美術の史上初の詳細な情報やリストが得られることになるばかりか、これまで日本では全く知られていなかった作品が新たに見出される可能性がある。これは日本仏教美術研究のための新たな素材を生み出すのみならず、なぜ欧州人が、あまたある日本仏教美術作品の中からこうした作品を選び出したのかを分析するための貴重な素材ともなる。それはまさに日本を相対化する(外から日本を見る)ための重要な要素であり、近年の国際日本学研究の柱でもある。またそこには日本人自身では気づかない日本的な特性が含まれている可能性もある。これらによって「日本とは何か」といった根本的な問題に新たな光を当てる素材が提供されるようになるとともに、今後の欧州における日本仏教美術研究者の育成にも大いに貢献することになる。
研究概要
・課題1)欧州の博物館・美術館・図書館に所蔵される日本仏教美術品・民俗資料の悉皆調査及びそれを通して欧州における日本観の研究
・課題2)調査されたパートナー機関の成果発表・意見交換としてのシンポジウム開催
・課題3)調査結果・シンポジウム発表の論文をまとめた最終英文報告書の出版
・課題4)本研究を通して欧州における日本研究に貢献
・課題5)欧州及び日本の若手研究者の育成に寄与
研究体制
*所属等は2013年3月末時点のデータ
| 研究代表者 | ヨーゼフ・クライナー(法政大学国際戦略機構特別教授) | |
| ①在欧日本仏教美術関係資料悉皆調査のための欧州での組織整備 | クリスティアン・シュタイネック(チューリッヒ大学主任教授) ヘレナ・ホンコオポア(プラハ国立美術館館長) ハンス・オイルシュレーガー(ボン大学准教授) セップ・リンハルト(ウィーン大学教授) |
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| ②在欧日本仏教美術関係資料の悉皆調査 | クリスティアン・シュタイネック(チューリッヒ大学主任教授) シュタイネック・智恵(法政大学国際日本学研究所客員所員) ジョセフ・キブルツ(法政大学国際日本学研究所客員所員) |
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| ③収集情報の欧州側での一次整理 | クリスティアン・シュタイネック(チューリッヒ大学主任教授) シュタイネック・智恵(法政大学国際日本学研究所客員所員) ジョセフ・キブルツ(法政大学国際日本学研究所客員所員) |
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| ④既知の情報の法政大学国際日本学研究所での整理 | 小口雅史(法政大学文学部教授) シュタイネック・智恵(法政大学国際日本学研究所客員所員) 澤登寛聡(法政大学文学部教授) 王 敏(法政大学国際日本学研究所教授) 田中優子(法政大学社会学部教授) 小林ふみ子(法政大学文学部准教授) 髙橋悠介(法政大学国際日本学研究所客員所員) 荒木志伸(法政大学国際日本学研究所客員所員) 口井知子(法政大学国際日本学研究所客員所員) 神野祐太(法政大学国際日本学研究センター客員研究員) 田口昌弘(法政大学国際日本学研究所客員学術研究員) |
島谷弘幸(東京国立博物館副館長) 丸山士郎(東京国立博物館教育講座室長) 伊藤信二(東京国立博物館教育普及室長) 須藤弘敏(弘前大学人文学部教授) 澤田和人(国立歴史民俗博物館准教授) 稲本泰生(奈良国立博物館学芸部企画室長) 野尻 忠(奈良国立博物館学芸部情報サービス室長) 清水 健(奈良国立博物館学芸部企画室研究員) 赤尾栄慶(京都国立博物館学芸部上席研究員) |
研究対象
1 彫刻
2 絵画
3 工芸(法具など)
4 染織
5 お札
おもな現地調査実績
*2013年3月末時点のデータ
| ドイツ | ・ベルリン・国立アジア美術館 ・ベルリン・国立民族学博物館 ・シュツットガルト・リンデン民族学博物館 ・フライブルグ市立博物館 ・ランゲン財団美術館 ・ケルン市立ラウテンシュトラウフ・ヨースト民族学博物館 ・ミュンヘン州立民族学博物館 |
| 英国 | ・大英博物館 ・大英図書館 ・ホーニマン庭園博物館 ・ヴィクトリア&アルバート博物館 ・オックスフォード大学アシュモリアン博物館 ・オックスフォード大学・ピット・リバース民族学博物館 ・センズベリー・センター美術館 ・ロンドン大学SOAS |
| チェコ | ・プラハ国立ギャラリー ・ナプルステック国立民族学博物館 ・プラハ芸術建築アカデミー |
| フランス | ・国立ギメ東洋美術館(パリ) ・国立図書館 ・チェルヌスキー・パリ市立アジア美術館 ・ケブランリー博物館 |
| ベルギー | ・ブリュッセル王立美術館 |
| スイス | ・リートベルグ美術館 ・チューリッヒ大学民族学博物館 ・ザンクト・ガッレン市立歴史民族学博物館 ・ジュネーブ市立民族学博物館 ・バウル・コレクション・ジュネーブ |
| イタリア | ・トリノ市立オリエント美術館 ・国立オリエント博物館ジュゼッペ・テュッチ, ローマ ・国立民族学博物館ルイジ・ピゴリーニ, ローマ |
| ラトビア | ・リガ国立海外美術館 |
研究成果の一般公開
【講演会等】 *所属等は開催当時のデータ
◆ 「ギリシャ国立東洋美術館所蔵の日本絵画調査から」
2011年2月25日 報告者:河合正朝氏(財団法人出光美術館常勤理事、慶應義塾大学名誉教授)
◆ 「大英博物館を彩った日本美術—明治・大正期の日英文化交流を中心に」
2011年6月24日 報告者:彬子女王殿下(立命館大学衣笠総合研究機構ポストドクトラルフェロー)
◆ 「シーボルト旧蔵大英図書館所蔵『地蔵菩薩霊験圖』について」
2011年10月14日 報告者:辻英子氏(聖徳大学人文学部教授)
◆ 「ナープルスティック博物館(プラハ)の日本コレクション」
2012年7月18日 報告者:ヘレナ・ガウデコヴァ氏(ナープルステック・アジア・アフリカ・アメリカ文化博物館学芸員)
【国際シンポジウム】
◆ 『ヨーロッパの博物館・美術館保管の日本仏教美術コレクションと日本観の形成』
2012年6月4日~6月6日 会場:ポーランド
【国際シンポジウム報告会】
◆ 『ヨーロッパの博物館・美術館保管の日本仏教美術コレクションと日本観の形成』
2012年11月17日 会場:法政大学
【刊行物】英文研究成果報告書
◆ Japanese Collections in European Museums Vol. IV: Buddhist Art, Bonn 2013
研究成果及び波及効果
・我が国の日本研究の進展への寄与
・諸外国における日本研究の活性化への貢献と、我が国及び諸外国の日本研究の持続的発展への貢献
・我が国の人文・社会科学の国際化
最終評価結果
平成25年(2013年)3月31日をもってその事業を終了し、最終結果として「A」評価(事業の目的に照らして、十分な成果があった)をいただいた。
在欧博物館等保管日本仏教美術資料データベース(JBAE)について
◆ プロジェクトについて
「欧州の博物館等保管の日本仏教美術資料:デジタル化と研究(JBAE)」は、欧州の博物館に所蔵される日本仏教美術の悉皆調査と包括的研究を行うプロジェクトである。収集した関連情報をデータベース上で一般公開することで、日本仏教美術及び日本文化に関する研究促進、展示普及活動に役立つ基盤を提供する。また、活動の一端として、協力博物館に対しコレクション再評価のサポートも行う。
◆ JBAEデータベースについて ▶https://aterui.ws.hosei.ac.jp/jbae/
在欧博物館等保管日本仏教美術資料データベース(JBAEデータベース)は、法政大学国際日本学研究所の小口雅史教授により管理・運営されており、自由に閲覧することができる。
▶JBAEフライヤーはこちら
▶JBAEプロジェクトに関する情報はチューリッヒ大学のWebサイトでもご覧いただけます。https://www.aoi.uzh.ch/en/japanologie/forschung/jbae.html
関連イベント
◆ 平成25~27年度科学研究費助成事業(基盤研究(B))「在欧日本仏教美術の基礎的調査・研究とデータベース化による日本仏教美術の情報発信」(研究代表者:クライナー・ヨーゼフ)
公開講演会『欧州コレクションにおける日本の宗教画と「おふだ」が伝える江戸時代の信仰』-
開催日:2015年7月28日(火) 後援:法政大学国際日本学研究所
ご参考
◆ 資料紹介「ラトビア国立美術館所蔵の釈迦如来坐像について」(神野祐太,『国際日本学』11, 127-135, 2014) ▶PDF版はこちら

