【開催報告】アルザス欧州日本学研究所(CEEJA)国際学術シンポジウム(HIJAS共催)”Regional studies and Japan : attractiveness of Japanese local territories”(日本における地方の魅力)第1回開催報告(2023年3月16日~18日)2023/04/27
アルザス欧州日本学研究所(CEEJA)国際学術シンポジウム(HIJAS共催)
“Regional studies and Japan : attractiveness of Japanese local territories”
(日本における地方の魅力)第1回開催報告
去る3月16日~18日、アルザスにおいて標記の国際シンポジウムが開催された(対面とZoom Webinars利用によるHybrid-Flexible形式)。これはCEEJAが(公財)東芝国際交流財団(Toshiba International Foundation=TIFO)の助成(2022年3月決定)を得て行われたもので、企画段階からHIJASが協力して構成したものである。主に在欧州の日本学研究者に向けて、基本的な日本の地方の実態と歴史的意義が明確になるような構成を考えた。日本の地方の扱い方にはいろいろな切り口があるが、今回は焦点を北に当てて、日本史における北の地方について解説することとしたのである。
Scientific Committeeは、小口雅史(HIJAS)、François LACHAUD(フランス国立極東学院(EFEO) )、Virginie FERMAUD(CEEJA)の3名。第1回のタイトルはNORTHERN LIGHTS : Japan’s Septentrional Regions in Ancient and Mediaeval Times。邦題は「古代・中世日本の北の地方は輝いていた!」とさせていただいた。
16日に開会セレモニーがPalais de l’Europe(Le Conseil de l’Europe, Strasbourg。ヨーロッパ評議会)Salle n°10で行われた(写真1)。Palais de l’Europe 前庭にはヨーロッパ評議会を構成する諸国の国旗が掲げられていたが、ロシア国旗は降ろされていた。
写真1 Palais de l’Europeの外観
まず開会の挨拶が行われ、CEEJA所長のCatherine TRAUTMANN氏(写真2)、(公財)東芝国際交流財団 専務理事の大森圭介氏(写真3)、在ストラスブール日本国総領事の内田浩行氏(写真4)、HIJASから小口(写真5)、EFEOのLACHAUD氏(写真6)の順に祝辞が述べられたが、小口は加えてTIFOへの謝辞と今回のシンポの意義と内容についても概括的に触れた。
そのまま基調講演へと移り、HIJAS客員所員・ボン大学名誉教授のJosef KREINER氏より(写真7)、‘Japanese cuiture from a Regional Perspective : Toward a Pluraristic Understanding’(邦題は日本文化の地球性)と題して実施されて、初日の諸行事を無事に終えた。素晴らしい会場での盛大な開会式となり、TIFO関係者にも好評であったとのことである。
◆2023年3月16日 開会セレモニー・基調講演 会場:Palais de l’Europe Salle n°10 | |
写真2 CEEJA所長 Catherine TRAUTMANN 氏 |
写真3 (公財)東芝国際交流財団専務理事 大森圭介 氏 |
写真4 在ストラスブール日本国総領事 内田浩行 氏 |
写真5 法政大学文学部教授・国際日本学研究所兼担所員 小口雅史 |
写真6 フランス国立極東学院 François LACHAUD 氏 |
写真7 基調講演 法政大学国際日本学研究所客員所員・ボン大学名誉教授 Josef KREINER 氏 |
翌17日から会場をColmarのCEEJAの施設であるCorps de gardeに移して、個別報告会が開催された(写真8。司会は小口)。Corps de gardeは日本では「ハウルの動く城」の建物のモデルとして著名なMaison Pfister(この建物内にもCEEJAの施設がある)に近接しており、Colmarの旧市街の一等地にある。
17日は、まず、今回のシンポの対象となる時代の始まりを告げるために、小口によるオープニング報告として「「日本」史における北方世界の始まり(古代蝦夷とは何か)」を置いた。続けて佐々木利和氏(HIJAS客員所員、北海道大学アイヌ・先住民研究センター招へい教員)より「聖徳太子絵伝に描かれた蝦夷たち」「『蝦夷島奇観』に描かれたアイヌ」と、続けてCEEJAにて報告していただいた。その後は、日本からオンラインにて、鈴木琢也氏(北海道博物館)「古代の北方世界における交易と交流」、八重樫忠郎氏(岩手大学客員教授)「北方世界の中世的展開(奥州藤原氏の世界)」と続き、最後には中村和之氏(HIJAS客員所員、函館大学教授)の「中世アイヌの誕生とその背景-交易の民アイヌ」「北からの蒙古襲来」と続けてCEEJAより報告いただいて、質疑応答の後、2日目を無事に終えた。
18日は(写真9。司会はCEEJA副所長 Regine Mathias氏)高瀬克範氏(北海道大学教授)による千島列島を舞台にした「中世アイヌの北方世界への広がり」から始まり、François LACHAUD 氏 (EFEO) による「「クマ変奏曲」日本の北方の想像力と民俗宗教」、欧州のアイヌコレクションを中心としたKREINER氏による「工芸美術や民具コレクションの役割」と続いた。本来はここでJohannes WILHELM氏による「安藤氏伝統を引く秋田またぎの世界」という報告をいただく予定であったが、都合により中止となり、代わりに前述のKREINER氏の報告が入ることになった。最後に小口によるエンディング報告として「日の本将軍安藤氏の活躍と衰退-日本社会の均一化への道程-」を置いた。さらに総合討論で全体を締めくくり、第1回の国際シンポジウムを無事に綴じることが出来た。
◆2023年3月17日・18日 個別報告会 会場:CEEJA施設内 Corps de garde | |
写真8 3月17日の様子 司会:小口雅史 |
写真9 3月18日の様子 司会:CEEJA副所長 Regine Mathias 氏 |
なお内容の詳細については、後日、英文の報告書を刊行することとなっているのでそれを参照されたい。
第2回は第1回に続く時代として、日本近世社会とアイヌ社会との関係を中心に、本年12月に同じく
【執筆:小口雅史(法政大学文学部教授・国際日本学研究所兼担所員)】