【開催報告】研究会「異世界に魅せられる――江戸時代後期における海外の古物との邂逅」(2022年6月14日)2022/06/27

2022年度-2024年度科学研究費助成事業(基盤研究(C))
「近世後期の好古・考証研究の源流と展開に関する学際的国際共同研究」研究会

「異世界に魅せられる――江戸時代後期における海外の古物との邂逅」

■開催日時
2022年6月14日(火)18:00~19:30

■会場
オンライン (Zoom使用)にて開催

■報告者
マルガリータ・ウィンケル(ライデン大学)

■司会
小林ふみ子(法政大学文学部教授・国際日本学研究所兼担所員)

***************

【開催報告】

去る2022年6月14日(火)18:00~、ライデン大学のマルガリータ・ウィンケル氏による
研究会「異世界に魅せられる―江戸時代後期における海外の古物との邂逅―」をオンライン
で開催しました。この企画は、「近世後期の好古・考証研究の源流と展開に関する学際的
国際共同研究」(2022-24年度科学研究費補助金・基盤研究(C)・代表明治大学中井真木
)の主催、本研究所の共催で、プロジェクトメンバーとして小林ふみ子(本研究所兼担研
究員)が司会を務めました。

このプロジェクトでは、近年、思想史・歴史・日本文学研究という垣根を超えて関心が
高まっている18-19世紀日本における古代~近世初期の古物や文献を対象とする学術・考
証的関心の高まりを対象とし、その営為を和学・国学を超えた広い文脈に位置づけること
を目指しています。

その最初の公開研究会となった今回は、メンバーの1人であるウィンケル氏による、桂
川家の蘭学者にしてこの時代の学者・文人・戯作者等とも幅広い交友を持った万象亭こと
森島中良(1756?-1810)を中心とする報告でした。中良らの学術的営為において西洋や琉
球をはじめとする異国への関心が当代と古物と双方に向かっていること、同時にその事物
探究の手法が日本の古物を研究する方法と連続性があること、さらにオランダにおける日
本を対象とした民俗学の方法とも共通点があることが多くの日蘭その他さまざまな資料に
即して提示されました。さらに中良の『琉球談』(1790年跋刊)の図が、後年、アーネス
ト・サトウ『Notes on Loochoo』にそのまま転載されるように近代の学術にまでつながっ
ていくとの指摘も重要です。その他、鳴滝塾で学んだ美馬順三とシーボルトが交わした『
助産問答』が日本の習俗を伝えるものとしてジャワのオランダ人たちによるバタビア学会
『バタビア学芸協会論叢』に掲載されたのちドイツ語訳・フランス語訳が出されて広まっ
たことや桂川家6代当主桂川甫賢(1758-1844)が同学会名誉会員になっていることなど、
ほとんどの日本の研究者が知らない事実が多々交えられたのも貴重でした。

近世日本の好古的営為に関心を持つ研究者のみなさまをはじめ、27名の方にご参加いた
だき充実した議論をすることができました。報告くださったウィンケル氏、またご参加く
ださいました皆さまに感謝申し上げます。

【執筆:小林ふみ子(法政大学文学部教授・法政大学国際日本学研究所兼担所員)】

【オンライン研究会の様子】

 

お知らせ一覧へ戻る