【開催報告】第7回ヨーゼフ・クライナー博士記念・法政大学国際日本学賞授賞式および記念講演会(2022年3月9日)2022/03/18

第7回ヨーゼフ・クライナー博士記念・法政大学国際日本学賞授賞式および記念講演会

日時:2022年3月9日(水) 17:00~18:30 (オンライン開催)

■受賞者  金 志映(キム・ジヨン)氏(淑明女子大学校人文学研究所助教授)
■司 会  横山 泰子(法政大学国際日本学研究所長、理工学部教授)
■挨 拶  髙田 圭(法政大学国際日本学研究所専任所員、専任講師)
■祝 辞  田中 優子(法政大学国際日本学研究所客員所員、本学名誉教授)

2022年3月9日に第7回ヨーゼフ・クライナー博士記念法政大学国際日本学賞の授賞式が開催されました。本賞はヨーロッパを代表する日本研究者であり、法政大学国際日本学研究所(HIJAS)の設立以来、その発展に貢献してきたヨーゼフ・クライナー博士の功績を称え、海外の若手日本研究者の活動を奨励する目的でHIJASが2014年に創設したものです。第7回目となる今回は、厳正な審査の結果、淑明女子大学校人文学研究所の金志映(キム・ジヨン)氏による『日本文学の〈戦後〉と変奏される〈アメリカ〉―占領から文化冷戦の時代へ』への授賞が決定しました。

例年であれば、受賞者を法政大学に招待し式典が開かれますが、今回はCovid-19のパンデミックの影響によりオンラインでの開催となりました。受賞者の金志映氏は、現在拠点を置く韓国から参加し、横山泰子所長の司会で行われた授賞式では、オンライン上で正賞の賞状が読み上げられました。

開会挨拶において、筆者は、国境を越える現象から日本を再度捉えなおすにあたって金志映氏の作品が非常に意義のあるものであり、特に日本人作家の文学作品、米国の文化政策、そして国際交流の制度といった観点から重層的にトランスナショナルな現象とその影響が描かれていることの重要性を述べました。また、国際日本学研究所・客員所員で前法政大学総長の田中優子氏による祝辞では、現在、米国の日本への文化的影響は極めて自然なものとなっているが、その成り立ちをしっかりと歴史的に紐解いていくことが大切だと述べ、受賞作品を讃えるとともに受賞者の今後の研究への大きな期待が寄せられました。

授賞式の後、受賞作品に基づき、冷戦下の米国による文化政策の一環として位置付けられるロックフェラー財団のフェローシップによって渡米した日本人作家たちについての講演がなされました。「アメリカを『正しく』理解し、描くことによってこれらの価値を推進」することを期待された日本人作家のフェローたちがどのように選抜されたのか、また米国体験がその後の作家活動や作品内容にどのような影響を与えたのか、といった問いに対してロックフェラー財団文書館所蔵資料で発掘された資料や文学作品を紹介しながら詳細な説明がおこなわれました。

今回の受賞作は、クライナー賞でははじめてのアジアからの作品であり、冷戦構造が未だに続く韓国出身であるからこそ「冷戦」という視点から戦後日本文学/文化研究に切り込む独自のアプローチが生み出されたという受賞者の言葉が印象的でした。また、幼少期に日本で生活をし、その後再び大学院で研究をするために来日した受賞者のトランスナショナルな経験がこうした越境の視点を獲得するに至ったのだろうとも感じました。

今後も世界各地の優れた日本研究の応募を期待します。

【執筆:髙田 圭(法政大学国際日本学研究所専任所員)】

受賞者  金志映 氏
横山泰子所長

 

髙田圭専任所員

 

田中優子名誉教授

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