【研究所訪問】ツベタナ・クリステワ氏の本研究所訪問(2019年7月16日)2019/07/18

日時:2019年7月16日(火)

場所:法政大学国際日本学研究所(HIJAS)所長室

2019年7月16日、国際基督教大学日本文学教授のツベタナ・クリステワ氏(日本名:十文字華子は母国ブルガリア語でのお名前を日本語に直訳したもの)が、本学文学部史学科教授(近世フランス史)高澤紀恵氏のご紹介で、HIJASを訪れて、新しい国際日本学の方向性をめぐって情報交換を行った。

ツベタナ・クリステワ氏は、母国では『枕草子』や『とはずがたり』、さらには太宰治『斜陽』のブルガリア語への翻訳で知られ、数々の翻訳関係の賞を受賞されていたが、来日後、東京大学大学院人文社会系研究科客員教授を経て国際基督教大学教授に着任され、今に至っている。2000年に『涙の詩学 王朝文化の詩的言語』で東京大学より博士(学術)を取得されたが(名古屋大学出版会より2001年に出版)、本書は平安朝の「袖」はなぜ涙に濡れているのか、日本古典文学で随所見られる「涙」の意味をわかりやすく説明した名著として知られている。和歌文学にも深い関心をもっておられ、『心づくしの日本語-和歌でよむ古代の思想』(筑摩書房、2011年)、ドナルド・キーン氏との共著『日本の俳句はなぜ世界文学なのか』(弦書房、2014年)などもよく知られているし、さらには編著『パロディと日本文化』(笠間書院、2014年)のような、時代もジャンルも対象をも越える意欲的な研究にも取り組んでおられる。

現在、本研究所では、新しい国際日本学の構築を目指して、次のステップに踏み出すべく、様々な可能性を模索しているが、ツベタナ氏の研究も、その一連の著作から明らかなように、いくつかの新しい可能性を示唆してくれている。本日の会談では、単に文学研究にとどまらない、哲学的(とくに道教などの東洋哲学)、思想史的、さらには物理学をも取り込んだ複合的な視点の重要さを力説されたのが印象的であった。

ちなみに本年のEAJRS(日本資料専門家欧州協会)は氏の母国ブルガリアの首都ソフィアで開催される。ソフィアの日本研究現状をめぐっての情報交換もできた。

新しい国際日本学を目指して、これまでHIJASでは取り組んだことのない、古代文学などをも踏まえて、最新の氏の研究を年内にもHIJASでご披露いただくことを約束し、またCEEJA(欧州日本学研究所)での活動も含めて今後とも欧州と日本をつなぐ国際日本研究の発展をめざして引き続き協力関係を保つことで意見が一致し、散会となった。

【記事執筆:小口 雅史(法政大学国際日本学研究所所長、文学部教授)】

(左よりツベタナ・クリステワ氏、小口雅史所長、高澤紀恵氏)

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