【研究所訪問】青森県環境生活部県史編さんグループ主幹 伊藤由美子氏の研究所訪問(2018.5.16)2018/06/06
日時:2018年5月16日(水)
場所:法政大学国際日本学研究所(HIJAS)
(左より小口雅史所長、伊藤由美子氏)
5月16日、青森県史編さんグループでデジタル化作業を一手に担っている伊藤由美子氏が、本研究所を訪問された。
青森県では、平成8年に県史編さん事業を開始し、平成29年度の通史全3冊の刊行を最後に『青森県史』全36巻が完成した。青森県史には、通史編の前提として、自然(生物・地学)、文化財、考古、歴史(古代・中世・近世・近現代)、民俗の各資料編がある。小口も古代部会長、県史編さん企画編集委員会副委員長、通史部会長として、最初から最後まで関与させていただいた。その完結はまさに感無量、といったところである。
さて20年余りにわたって収集してきたその県史編さん資料は、膨大な資料群を形成しており、単に学術的な価値ばかりでなく、青森県そのものを様々な角度から網羅する、貴重な歴史的資料となっており、その価値には計り知れないものがある。県史編さん終了後にそれを死蔵させておくのはあまりにもったいないのである。
そこで、この県史編さん資料を県民の共有財産として、郷土の歴史に触れやすい環境を整備し、県民が手軽に調べられ、また、地域力の強化につなげることができるよう、資料を検索・閲覧できる「青森県史デジタルアーカイブス」のシステム構築を平成29年度から開始している。
これは、資料の種類・性質により分類した5本のデータベースと、データベースに基づくデジタル展示室から成り立つ。そしてデータベース間の横断検索機能と、地図検索機能をもち、他機関のデータベースともリンクすることが可能である。
平成30年5月現在、今年度下半期の公開を目標として、資料整理・データ入力などを行っている。公開にあたって、データベースの幅広い活用をめざして、他機関との連携も模索している。
今回の訪問は、こうした実施計画を踏まえて、多様なデジタルアーカイブを公開しており、また奈良文化財研究所・国立歴史民俗博物館等ともデータベースで連携をとっている本研究所の電子図書館システムについての実情調査と、その公開にあたっての様々な問題点、具体的作業について意見交換するものであって。
自治体史編さんにあたって多くの県民からの協力を得たことを考えれば、「青森県史デジタルアーカイブス」による、県史編さん室の収集データの積極的公開は当然のことと考える。今後、それを支援するとともに、今年度中の公開実現を大いに期待している。
【記事執筆:小口 雅史(法政大学国際日本学研究所所長、文学部教授)】