【開催報告】<日本の「混成文化」――禹王信仰を通して>講座(2017.12.15)2018/01/11
<日本の「混成文化」――禹王信仰を通して>講座開催報告
日 時: 2017年12月15日(金)20:00-21:30
場 所: 日中友好会館後楽寮内
講 師: 王 敏(法政大学国際日本学研究所専任所員、教授)
題 目: 日本の「混成文化」――禹王信仰を通して
講座内容
日本文化の特性について、青木保氏が「混成文化」(異文化理解)という概念を提唱されている。日本文化の成り立ちが大きく影響しているとみられる。日本列島はユーラシア大陸の東端にあるため、先史時代より異邦人の移動の流れ着く位置を占めてきた。当然のことながら列島に移り住んだ人たちによる多文化の伝播も蓄積してきた。その結果、多様な文化が列島で混交する中で新型文化が生成することになった。こうした「混成文化」型日本文化にどのようにアプローチするのか、アプローチも多様にならざるを得ない。そのため、国内外に共に求められる研究課題への検討及び確認が期待されている。
近年、アジア諸国で注目を集めているのが日本の「禹王信仰」である。中国最古の夏王朝の王といわれた禹王は、中国において長らく治水のリーダーとして尊敬を集めてきた。日本においても治水が第26代の継体天皇の九頭竜川治水以来、各時代の重要な営みとして記紀等に記録され、禹王を治水神と位置付けてきた。治水神・禹王研究会の調査により、神奈川県南足柄地域にある福沢神社で禹王祭りが300年もの間、続けて行われた。全国39の地域に禹王信仰に関係する史跡文物の133カ所の発掘調査成果が発表されている。また、禹王への信仰の形態が現代日本に存続され、その特徴の一部がアジア諸国とも共有される実態が示されていることがわかった。
日本の禹王信仰を通して「混成文化」の特質が考案され、日本文化に吸収された異なる地域文化の縦横が検証されている。日本文化の新たな発信につながる事例として期待している。
【記事執筆:王敏(法政大学国際日本学研究所専任所員、教授)】
参加者集合写真
(真ん中、左側は王敏氏、右側は夏瑛氏)
開催チラシ