【開催報告】李明艶氏による外国人客員研究員研究成果報告会(2016.5.11)報告記事を作成しました2016/05/30

法政大学国際日本学研究所
外国人客員研究員研究成果報告会

 

日 時: 2016年5月11日(水)14時00分~15時30分
場 所: 法政大学九段校舎別館 研究所会議室6
報 告: 李 明艶‍ (チャイナネット)
司 会: 王 敏 (法政大学国際日本学研究所専任所員、教授)

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李明艶氏

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会場の様子

法政大学国際日本学研究所では2016年1月13日―5月13日の期間、中国国家留学基金管理委員会より,中国外文局・チャイナネット所属の編集者、記者である李明艶女史を外国人受入研究員として受け入れてきた。このたび,4ケ月に亘る研究活動の終了に伴い, 5月11日に李明艶女氏の研究報告会を開催したが,その時の研究報告を以下に掲載する。
王敏(法政大学国際日本学研究所専任所員、教授)

 

研究報告(抜粋)
一、 自己紹介
私は中国四川省の出身で、北京にある第二国語学院で4年間(大卒)、経済貿易大学大学
院で2年間(修士号取得)、日本語と総合的日本研究を学んでいた。2006年に中国外文局所管のチャイナネット(中国網)に入社し、今年でちょうど10年を迎えている。

1.中国外文局
中国外文局は対外宣伝の国営広報機関であり、中国国際出版グループとも呼ばれている。1949年に成立して以来、年間約20種類の言語で3000種類の図書、20種類の雑誌(電子定期刊行物)を発行し、世界の主要国や地域に16カ所の駐在機関を設けている。

2、チャイナネット(中国網)
1998年、外文局はチャイナネットを設立し、10カ国、11種類の言語で情報を発信している。現在、利用者は世界200の国と地域に及んでいる。ちなみにニューヨークではタイムズスクエア、日本では銀座四丁目のスクリーンにチャイナネットのコマーシャルが掲載中である。
「チャイナネット」日本語版の内容は中日両国、政治、経済、文化、社会、生態環境、観光などをカバーし、ニュース、特集、ビデオ、オンライン中継などさなざまな角度から中国と中日の交流を全面的に紹介している。

二、 日本研究の成果
1、 翻訳の技能は実践から
研修の期間中、日本語から中国語への翻訳演習を約12万字重ねてきた。翻訳や編集を担当する私にとって、次の認識を深めさせてくれた。

1).日本語の基礎知識を強めなければならなく、語彙の豊かさ、文法力と読解力は何れも欠けてはならない。
2).母国語の能力を無視してはいけない。外国語のレベルが高くても、母国語の能力が低ければ適切な翻訳は出来なくなる。母国語の面の分析力や説明力が強ければ、訳文の質も高まる。
3).知識の幅を絶えず広げなければならない。情報爆発時代において、各分野でより豊富な知識が求められているから、時代とともに歩んでいくということを常に明記すること。
4).翻訳に対する経験と認識は、翻訳の実践を通じてしか得られない。たゆまず翻訳という「実践活動」を実施してからこそ、翻訳論理の基礎を打ち固めることができる。翻訳の過程で考えながら経験と教訓を総括することで、翻訳の理論を抽出することができよう。翻訳行為に実際に加わるそのものが基本である。

三、研究所主催あるいは協力の研究活動への参加について
研修期間中、国際日本学研究所が主催、あるいは協力したシンポジウムと学術交流活動に、四回参加し、日本の学術動態の一端を知ることができた。

1.「国際日本研究-対話、交流、ダイナミクス」シンポジウム
参照:http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2016-01/30/content_37699726.htm

2.シルクロードと日本
参照:http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2016-02/01/content_37710062.htm

3.宮沢賢治と西遊記
参照:http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2016-04/21/content_38296314.htm

4.周恩来元総理の姪が法政大学を訪問 中日学者と交流
参照:http://japanese.china.org.cn/jp/txt/2016-04/27/content_38337511.htm

四、レポートと資料調査
研修期間中、中国人が関心を持った『壇蜜が日本自衛隊のリクルート隊長になったのはどうしてか』というレポート、『翻訳について』という小論文、山口県下関(しものせき)市忌宮(いみのみや)神社での“蚕種祭”について、資料調査を試みた。
いずれも今まで学校で体験することのない訓練を受け、記者としてもエディターとしても、これは不可欠な訓練方法だと認識した。どのように自分が身につけた知識や獲得した情報を系統的に整理した上で一歩一歩独自な観点を引き出すのかは、今後もこのような指導を受けることができればと願う。

五、後楽寮での「研修」
今回の研修内容の一環として、日中友好会館後楽賓館に泊まり、後楽寮の寮生になったこと。

1.背景紹介
日中友好会館は、中日国交正常化10周年を期して、両国政府首脳の合意により共同事業として建設された。その事業の一部である後楽寮は中国人研究者と留学生向けのものであり、1985年に設立されて以来、中国人留学生を計4600人受け入れ、「中国人留学生の家」と呼ばれている。

2.豊富な交流活動
日中友好会館の独特な役割によって、後楽寮は中日両国の政府機関や各種類の友好協会、公益団体やNPOなどとさまざまな交流活動を行っている。これらの交流活動に積極的に参加することによって、自分の見聞を広め、日本の生活や文化を体験し、個人の人生の貴重な経験になった。たとえば、日中友好会館後楽寮の主催による2016春節レセプション、神奈川(かながわ)県日中友好協会新春招待会、東京北区日中友好協会の餃子パーティー、文京区国際交流フェスタ、日中友好スポーツ交流会、群馬(ぐんま)県スキー・温泉文化体験活動などに参加する機会を得られた。また、毎週金曜日に行われている『後楽講堂』というセミナーで学ぶことができた。

六、取材活動 記事21本を発表
仕事の性質から、研修期間中、取材活動も重要な任務となっている。自分の目で見て自分が感じた日本のさまざまな面を読者に紹介したく、『宮本雄二元中国大使の講演:「中日の安定した協力関係を作る以外選択肢ない」』、『日本国民の価値観と美意識に対するシルクロード文化の影響』、『国際日本研究はどのような道を進むべきか?』、『量的緩和政策と国際通貨の情勢にどのように対応すべきか』など、21本の記事をチャイナネットに発表した。

四カ月間の生活は一瞬のように短かった。総じていえば、これは忘れがたい経験でもあり、私にとって貴重な宝物でもある。法政大学国際日本研究所の皆様、後楽寮のみなさまに心から感謝する。ありがとうございました。

【記事執筆:李明艶(法政大学国際日本学研究所外国人客員研究員、中国外文局・チャイナネット編集者、記者)】

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