【開催報告】「国際日本学と国際中国学の交差点―日本における禹王信仰に関する調査を中心に」共催講座2017/01/11
「国際日本学と国際中国学の交差点―日本における禹王信仰に関する調査を中心に」共催講座の開催報告
・日 時: 2016年12月30日(金) 20時~22時
・場 所: 日中友好会館後楽寮内
公益財団法人日中友好会館所管の学際的総合研究の一環としてのセミナー「後楽講堂」と本研究所の王敏研究室の共催により、標記の講座を開催した。本講座を受けた北京師範大学日本の歴史と文学を専攻とする博士課程在学中の李国磊さんの感想文を、報告の一端として掲載することとさせていただく。
( 法政大学国際日本学研究所専任所員・教授 王敏・公益財団法人日中友好会館 留学生事業部 部長 夏瑛 )
共有する文化から共生の場を見いだす――王敏教授の講座から思ったこと
北京師範大学博士課程 李国磊
後楽寮で、週に一回の行事として、違った学科分野の講座が行われます。2016年と別れを告げる12月30日という日に、法政大学王敏教授を迎え、「国際日本学と国際中国学の交差点―日本における禹王信仰に関する調査を中心に」をテーマに講座を行っていただきました。待ちに待った大勢の寮生は興味深く聞きました。
王敏教授は日本の禹王信仰を研究するきっかけから、講座を始めました。中国古代「治水の功労者」である禹王はまだ文字がなかった時の日本に伝わりました。漢字が日本に伝わってから、禹王は漢字によって記録され、日本人に愛されて、「地平天成」の理想像や「勤勉」のシンボルになっています。禹王を祭る石碑は現在、日本で107ヶ所を数えると王敏教授は治水神・禹王研究会の研究成果を紹介してくれました。漢字を媒介にして「大禹」信仰は中日両国が共有する文化になっています。
王敏教授はこれまでに開催した5回の「禹王文化サミット」を紹介し、禹文化の現代的価値を掘り出すとともに中日両国の文化的絆を提起しました。
講座が終わった後、後楽寮留学生事業部夏瑛部長は感謝の言葉を述べ、寮生は色んな質問をだしました。禹王は日本に伝わってから、土着された形態から、中日両国は政治や歴史問題でよく対立状態に陥りますが、日本政府と民間との間の対日感情の違いをどう見るべきか?などについてでした。
一般の文化研究はよく「一言で言えば」というような叙述の暴力に縛られ、表面的、概略的な様相を呈していますが、王敏教授の研究内容はそれとは違って、いわゆる「虫眼」という視点から、細かく突っ込んだ研究を行って、有益な刺激を受けました。また、千年以上にわたり、禹王信仰及び漢字という文明は中日両国の共有する貴重な財産となったことを知らせてくれました。政治や歴史問題は中日両国に付き纏い、高く堅い壁になっていますが、共有する文化から共生の場を見いだすことができると思っています。それは王敏教授の講座からいただいた大事な示唆です。
参加者集合写真
(真ん中、左側は王敏氏、右側は夏瑛氏)
開催チラシ