【開催報告】2014年度第4回東アジア文化研究会(2014.7.28)報告記事を掲載しました2014/08/01
「国際日本学の方法に基づく<日本意識>の再検討−<日本意識>の過去・現在・未来」
研究アプローチ(3)「<日本意識>の現在−東アジアから」
2014年度 第4回東アジア文化研究会
台湾における日本研究の変容
- 日 時: 2014年7月28日(月)18時30分〜20時30分
- 場 所: 法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー25階B会議室
- 報 告: 于乃明(国立政治大学日本語学科 教授)
- 司 会: 王敏 (法政大学国際日本学研究所専任所員、教授)
各校の課程実施状況
2014年現在、台湾の大学数は165校である。そのうち、日本語学科を設置しているのは46校であり、全大学の約4分の1に当たる。
かつて台湾の大学の日本語学科及び修士課程では、主に文学や言語の科目を中心にカリキュラムが構成されていた。しかし、交流協会奨学金の選考に利用される日本留学試験では、2003年以降、受験科目としての日本文学が受験科目から除外された。それを境目として、各大学は、従来の言語、文学科目のほかに、歴史、文化、政治、経済など、さまざまな分野を取り入れたカリキュラムを編成するようになった。特に、当時台湾のビジネス界で日本語が使える人材の需要が高まってきたことを踏まえ、従来の日本語文学系とは異なる、実用性に重きを置いた応用日本語学科が次々と設けられるようになった。
台湾で著名な大学の日本語学科において近年開設される日本研究関連の科目である(語学、文学を除く)。日本史、文化、社会、思想、経済、宗教、政治、外交、地理、流行文化、経営学、台日関係など、きわめて多様である。大学院では、各領域、時代の文献講読、比較文化研究、近代日本文化、アジア各時代の特定課題研究、日本社会文化論、ならびに台日社会文化交流史など幅広い領域の科目を開設し、基本知識の導入と専門領域の研究に重点が置かれている。台湾の日本語教育と日本研究に関する学会
1.中日関係研究会 1971年に設立。
2.台湾日本研究学会 1979年に設立。
3.台湾日本語文学会 1989年に設立。
4.台湾日語教育学会 1993年に成立。
5.台湾日本言語文芸研究学会 1997年に創立。
6.台湾翻訳学学会 1997年に設立。
7.台湾応用日語学会 2002年に南台湾で成立。
8.現代日本研究学会 2010年に設立。
各大学の特徴と日本研究に関する学報
東呉大学と銘傳大学の日本語文学系では日本語教育と日本語学が柱となっている。輔仁大学では日本古典文学が、台湾大学では本来日本語学と日本文学が中心であったが、現在は日本歴史と日本文化にも重点をおくようになった。政治大学、淡江大学、文化大学においては文学、語学のほかに日本文化、日本歴史、日本政治、日本外交、日本思想などの専門分野の教師が多数である。
これまでの台湾の日本語学界では日本語学と日本文学の研究が中心であったが、ここ数年来、日本研究も次第に広い分野から注目されるようになってきた。日本語学界では主な学術論文誌に『台湾日本語文学報』と『台湾日本語教育論文集』があり、さらに政治大学の『政大日本研究』、台湾大学の『台大日本語文研究』、東呉大学の『東呉日語教育学報』、輔仁大学の『日本語日本文学』、淡江大学の『淡江日本論叢』、文化大学の『中日文化論叢』、東海大学の『日本語文学系学刊』、静宜大学の『日本学と台湾学』、銘傳大学の『銘傳日本教育』など各大学の紀要には、日本歴史、日本文化に関する研究論文も掲載されている。
日本研究センター
日本交流協会(2003)『日本研究調査報告書』と、2010年に早稲田大学台湾研究所から発行された『台湾における日本研究−制度化の現状、課題と展望』の2冊は、ともに台湾における日本研究について、実地調査に基づいてまとめられた報告書である。いずれも、台湾での日本研究の現状と問題点を明確に指摘している。台湾では、1963年に文化大学で日本語学科が設置されて以来、約50年の歳月を経ているが、社会科学系の日本研究が未だ十分に発達していないと言わている。
2009年から国際交流基金の援助の下で、台湾の大学で、8つの日本研究センターが開設された。
1.政治大学:日本研究センター(2009)
2.台湾師範大学:日本研究センター(2010)(2012年廃止)
3.中興大学:日本総合研究センター(2010)
4.東海大学:学際的複合日本地域研究センター(2011)
5.中山大学:日本研究センター(2010)
6.輔仁大学:日本研究センター(2012年6月)
7.台中科技大學:日本研究センター(2012年12月)
8.台湾大学:日本研究センター (2013年8月)学部を越えて、国を越えて(東アジア)
向こう5年間のうちに、台湾での日本研究には新たな局面が見えてくると考えられる。特に、分野横断的な研究が盛んに行われる傾向がある。台湾では、台湾大学、政治大学、淡江大学、輔仁大学などの例に見られるように、中国、日本、韓国の大学と連携し、院生の共同指導を図るという風潮が高まっている。さらに、各分野の専門家を招聘し、講演会や集中講義などを実施している。
グローバル化、学際・領域横断的研究、国際移動
現在台湾においては日本研究及び日本留学は、もはや日本語学科の学生、卒業生の唯一の選択肢ではない。グローバル化や学際横断的研究が盛んになった現在の学習・研究環境では、日本語学科の学生はいうまでもなく、非日本語専攻学生でも、誰もが日本研究に従事することが可能である。その意味で、ダブル・メジャーあるいは副専攻の制度は、今後の日本研究の発展にも寄与するものと考えられる。
【記事執筆:于乃明(国立政治大学日本語学科 教授)】
報告者:于乃明氏 |
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