シンポジウム 第1回研究会(2011.5.20-21,6.10-11)

「国際日本学の方法に基づく〈日本意識〉の再検討−〈日本意識〉の過去・現在・未来」
研究アプローチ(2) 近代の〈日本意識〉の成立」
2011年度 研究会及びシンポジウム

『日本民俗学・民族学の貢献 —昭和20-40年代まで—』


・日 時: 2011年5月20日(金)-21日(土)  6月10日(金)-11日(土)

・場 所: 法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー26階A会議室 法政大学九段校舎 遠隔講義室

・司 会: ヨーゼフ・クライナー (法政大学国際日本学研究所兼担所員・国際戦略機構特別教授)

左:クライナー教授,右:全京秀教授

会場の様子

集合写真

杉山晃一名誉教授

  『日本民俗学・民族学の貢献 —昭和20-40年代まで—』

 戦略的研究基盤形成支援事業「国際日本学の方法に基づく<日本意識>の再検討—<日本意識>の過去・現在・未来」研究アプローチ(2)の今年度の最初の二つの研究会は、5月20日・21日及び6月10日・11日の4日間にわたって開催された。昨年度討論してきた、昭和10年代の両みんぞく学の「多民族国家の大日本帝国及びその内地及び植民地における日本意識の形成」をテーマとして継承して、今年度は昭和20年から40年代頃までの両学問分野の発展を報告し、討論することにした。研究プロジェクト参加者は昨年度とほぼ同じで、海外からはアメリカのスタンフォード大学のベフ・ハルミ名誉教授、プリンストン大学のエミー・ボルボイ准教授、韓国ソウル国立大学校の全京秀教授が参加し、国内の研究者としては、新たに、桜美林大学の中生勝美教授、元一橋大学教授の長島信弘氏、東北大学の杉山晃一名誉教授、熊本県立大学の大島明秀教授の四名に入って頂いた。戦後間もなく、旧植民地の帝国大学あるいは諸外国にあった日本の研究機関から引き揚げてきた研究者は、外地での経験等を日本国内でどういかして民族学あるいは民俗学を確立し発展させてきたか、という点は、20世紀後半に著しい発展をみせた文化人類学や民俗学の学史を理解するための重要な研究課題である。特にアメリカ占領下の日本においては、GHQのCIE民間情報及び教育局の調査で果たした研究者の役割は重要である。そのような研究者が学んだアメリカの文化人類学、社会人類学の方法論あるいは調査の仕方に、「日本とは何か」という定義づけに直面するにあたって大きな意味があったことは確かである。そこで活躍した研究者、例えば石田英一郎、岡正雄、梅棹忠夫の活動と、柳田国男との研究交流と対峙について、何人かの研究プロジェクト参加者から報告された。特に5月の研究会では、東京大学文化人類学研究室設立をめぐる状況が、当時の一期生や二期生の研究者による報告や討論により、これまで以上に明らかに。二回目となる6月の研究会では、神奈川大学の川田順造特別招聘教授もこの点を取り上げ、当時の様子を克明に報告された。なお、6月の研究会の前半(6月10日(金曜日)夕方)は、法政大学を初の会場として開催された日本文化人類学会第45回研究大会を記念するかたちで、シンポジウム形式での発表となった。大勢の出席者から大変良い反響を頂いた。法政大学は、柳田国男先生はじめ、多くの研究者を教員に招いた歴史がある。石田英一郎先生は10年にもわたって法政大学で教鞭をとっていた。元総長を務めた中村哲先生は台湾や沖縄研究と深いかかわりがあった。そのような背景を踏まえ、このアプローチ(2)の研究が法政大学における文化人類学及び民俗学の研究にも刺激を与えることができると考えている。

【記事執筆:ヨーゼフ・クライナー(法政大学国際日本学研究所兼担所員・国際戦略機構特別教授】