ローザ・カーロリ教授の法政大学訪問(2009.3.16)
ローザ・カーロリ教授の法政大学訪問
・日 時:2009年3月16日(月)16時00分〜16時30分
・場 所:法政大学九段校舎
左より安孫子所長、星野センター長、ローザ・カーロリ教授、王教授
イタリア、カ・フォスカリ大学における日本研究・教育——人材育成への熱意
イタリアのカ・フォスカリ大学東アジア研究所副教授のローザ・カーロリ氏が、2009年3月16日に本学を訪問し、星野勉・常務理事、安孫子信・国際日本学研究所所長、王敏・同研究所専任所員・教授と有意義な会談の機会をもった。ローザ・カーロリ氏の研究分野は日本近現代史であり、特に沖縄史が専門である。カーロリ氏は本学国際日本学研究所の客員所員としてこれまで両研究所の協力関係に尽力しており、毎年日本訪問の機会にあわせて本学を幾度も訪問し、交流を積み重ねている人物である。
まず、星野理事と安孫子所長より、本学の国際日本学研究における最近の研究事情について紹介を行った。王敏からは、近年の日本学研究における中国との関わりについて若干の説明を行った。
カーロリ氏からは、カ・フォスカリ大学東アジア研究所における日本研究と教育について紹介があった。ベネチアにあるカ・フォスカリ大学は、イタリア国立大学である。カーロリ氏の紹介によれば、イタリアの大学は国立大学が90%、私立大学が10%という割合で、私立はほぼ貴族学校で、その学費も国立大学よりも10%以上高額であるという。
カーロリ氏が所属する東アジア研究所では、所属する学生の約三分の二が中国の政治経済について学んでおり、その動機は主に就職を考慮してのことであるという。日本の政治経済について学ぶ学生は約三分の一で、その動機は趣味的な関心の強さによるものだという。学生たちの中国に対する関心は、卒業後の就職を視野に入れた政治経済への関心の高さが明らかになっている。一方で、文化に視点を移すと、日本文化を学ぶ学生が三分の二、中国文化について学ぶ学生が三分の一というように、逆転の現象が顕著である。現在、イタリアでは日本のマンガやアニメの人気が高まっており、若者たち、特に日本語を学ぶ学生は日本文化への関心が高いことがうかがえる。しかし、日本語専攻の学生は2008年から就職難に直面しており、卒業後の進路について不安を抱いているという紹介もあった。
カ・フォスカリ大学東アジア研究所では、日本と中国について学ぶ学生が全体の42%に達し、研究所の存在意義として日本と中国への研究の重要性は明らかである。また、この数字は、イタリアにおける東アジア研究において、日本と中国がひとつの地域として認識され、重要視されていることを裏付けるものだと考えられる。
カ・フォスカリ大学東アジア研究所学生の学習状況を見ると、日本語履修者の方が中国語履修者よりもやや多いが、しかし、日本語専攻コースでは、現在教員不足が深刻な問題になっているという。7名の専任教員と6名の非常勤教員が967名の学生を教えており、教員の負担は深刻である。カーロリ氏は困難な状況を指摘しつつも、日本語教育の環境を整備しながら日本関係の人材育成を進めていきたいと熱意を語った。出席者は両研究所の協力の一層の発展についてあらためて確認し、実り多い会談となった。イタリアにおける日本研究・教育でのカーロリ氏の一層の活躍を期待したい。
【記事執筆:王 敏(法政大学国際日本学研究所教授)】