サイエド・R・アメリ教授の法政大学訪問(2009.2.24)

サイエド・R・アーメリー教授の法政大学訪問

・  日 時:   2009年2月24日(火)10時30分〜12時00分

・ 場 所:    法政大学九段校舎

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前列左より星野センター長、アーメーリー教授、王教授
後列左より安孫子所長

 

イラン発信の日本研究——エリア研究への挑戦

イラン・テヘラン大学副学長、大学院世界研究科長のサイエド・レザー・アーメリー氏が2009年2月24日、本学を訪問し、星野勉・常務理事と安孫子信・国際日本学研究所所長と有意義な会談の機会をもった。同研究所専任所員・教授の王敏は同席した。

最初に星野理事が本学の国際日本学研究の全体像を紹介した。ついで安孫子所長が西洋における日本研究の状況を説明、王敏は日本研究のうち東アジア及び中国における現状と成果について説明した。それを受けて、アーメリー氏がイランにおける日本研究の実態を語った。

イランにおける日本研究はイランで最も古い、最大の最高の学府、テヘラン大学が中心という。1934年に開学し、現在16の学部に3万2千人の学生が学んでいる。日本語は1989年に選択科目としてスタート、1994年に学科に発展し、現在定員は73名の枠と紹介があった。

アーメリー氏が言う。「私たちにとって、日本はイランから遠い存在ではない。日本は政治的な関係や文化的、社会的、経済的な側面だけでなく、生活の場所、空間を共有するという意味において隣人と捉えるべきなのである」

日本語学科を現状から前進させなければならないという。改善、さらには改革・発展が必要性を明らかにした。というのはグローバリゼーションと知的交流の趨勢に、日本研究も巻き込まれていることを指摘しないわけにはいかないという背景にあるからという。

物理的時空を超えてイランと日本を「隣人」関係に近づけさせたのは二重のクローバリゼーションズだと、アーメリー氏が捉えた。物理的な空間でのクローバリゼーションとバーチャルな空間でのグローバリゼーションである。二重のクローバリゼーションが並行していながら同時に結び付けているし、無限に広がっていく。物理的時空を超えていき、異なる地域の異人同士を互いにリンクしている。よって、配慮の利いたメッセージを相互に伝えられ、立場を理解する、交換する。異文化理解が自他共に必須である。

イランでは米英仏の研究は進んでいるが、日本研究のその実態は国立図書館の日本関係図書所蔵数を通して瞭然である。蔵書は602冊、論文25本にとどまる。

だが、2009年9月に日本研究プログラムがスタートする予定である。それも分野別の枠を打破し、学際的なプログラムに設定している(28単位/年)。たとえば、日本と中国、日本とアメリカのようにリンクしてエリア研究を進めていくという。中国政府肝いりの孔子学院も合わせて発足する予定である。二重のクローバリゼーションが深化していく中、同じ漢字を使う日本だけを漢字文化圏の枠から抽出して扱うことはもはやできなくなるからであろう。

アーメリー氏は今回の訪問にあたって、東アジアの視野で日本研究を捉えなおすことを参考になったとされる。特に中国における日本研究や、日中の文化関係および孔子学院についても関心事だったという。また、エリア研究の一環と捉えた日本研究プログラムの設立は、イランにとって歴史的な出来事だと言い切った。

最後にアーメリー氏はすばらしいメッセージを残してくださった。「厳しい状況だからこそ理解することが必要。そこでまず文化交流から!!」

エリア研究としての日本研究の発展を注目し、イラン発信の成果を心から待ちたい。

【記事執筆:王 敏(法政大学国際日本学研究所教授)】