第3代所長ご挨拶(2008年6月当時)

所長ご挨拶

2008年6月

本研究所は、文部科学省21世紀COEプログラムに本学の「日本発信の国際日本学の構築」が採択された2002年に設立されました。以来、本学既設の2研究所―野上記念能楽研究所、沖縄文化研究所―と連携し,国際日本学研究センターの統括の下、21世紀COEプログラム事業を精力的に推進してきました。同プログラムが終了した2007年からは、文部科学省私立大学学術研究高度化推進事業(学術フロンティア部門)プログラムに「日本学の総合的研究」が採択されたのを受け、やはり2研究所と結んで、国際日本学の引き続きの構築に取り組んでいます。

「日本学」そのものは外国産です。ある言語圏で、日本の何らかの文化現象を対象に行われている学問研究が、その言語圏で、まとめて「日本学」の名で呼ばれています。そこには文学、哲学、社会学、政治学、人類学といった人間諸科学の多様な観点が、共存しているのが普通です。「日本学」はもともと、それぞれの地域で、学際的に開かれた存在なのです。そこで、このような各所での「日本学」を結びつけ、それらにさらに国際的性格を付与することで、「日本学」総体に新たなダイナミックな展開をもたらすことを目指して、法政大学の提唱の下に立ち上げられたのが「国際日本学」です。

「国際日本学」はこうして、日本文化をフィールドとする、学際的であると同時に国際的な、きわめて意欲的な学問研究の試みです。これによって、日本における日本研究の諸成果が、より多量により直接的に、外に発信されていきます。それは各所で「日本学」を活性化させるとともに、日本文化への新たな関心を喚起していきます。

「国際日本学」はまたとくにこの日本において重要な存在です。日本には、日本についての文学研究、歴史研究などはあっても、「日本学」はありませんでした。そしてまた、日本における日本研究は、国文学、国史学といった仕方でとかく内に篭る傾向にありました。「国際日本学」は、そのような日本における日本研究を、学際的かつ国際的に開いていきます。このように二重に開くことで、「国際日本学」は、グローバリゼーションが進行する現世界下における、日本文化の特殊性と普遍性の見直しおよび再発見に、われわれを導いていきます。

現在、本研究所では、国際シンポジウム、研究集会などを通じて、内外の研究者とともに、以上の「国際日本学」の研究活動を展開しています。その研究成果は、『年報』を始めとする各種の出版物を通じて公開されています。また、研究活動のインフラと言うべき、内外の研究機関・研究者との交流・連携のネットワークの形成にも力を注いでいます。

法政大学国際日本学研究所長
法政大学文学部教授
安孫子 信
(第3代所長:2008年度~2013年度)

 

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