学術フロンティア推進事業

文部科学省が、わが国高等教育機関の大部分を占める私立大学等における研究基盤の整備および研究機能の高度化を図るため、「私立大学学術研究高度化推進事業」として行う支援事業のひとつである。学術フロンティア推進事業は、私立大学の大学院・研究所の中から、優れた研究実績を上げ、将来の研究発展が期待される卓越した組織を「学術フロンティア推進拠点」に選定し、研究施設、研究装置・設備、研究費、研究スタッフについて、総合的かつ重点的に支援するものである。
本プロジェクト「日本学の総合的研究」は、平成14年度に「私立大学学術研究高度化推進事業(学術フロンティア部門)」に採択された。

「日本学の総合的研究」研究プロジェクト構想

1.研究組織について

本プロジェクトの推進母体は「国際日本学研究所」であるが、プロジェクト全体の研究組織は、本学大学院の人文科学研究科日本文学・日本史学・地理学専攻の教員を中心に、日本学関連領域を研究する政治学研究科政治学専攻、社会科学研究科社会学専攻の教員が加わり、さらに本学の「野上記念能楽研究所」および「沖縄文化研究所」の所員、博物館担当教員が加わって構成されている。

2.研究プロジェクトの概要について

(1)研究プロジェクト全体の概要

本プロジェクトの基本コンセプトは「異文化研究としての日本学」である。この「異文化研究」には二つの意味がある。一つは、国外の日本研究の視点を取り入れて「自文化」をあえて「異文化」視するという、研究姿勢、方法論にかかわる意味である。私たちは、日本文化を、自明視するのではなくたえず「異他化」し、そこから距離を取りつつ、研究対象とする。それは、国際社会で通用する新しい日本学を構築するために不可欠の研究姿勢、方法論である。もう一つは、「日本の中の異文化」(とりわけ、琉球・沖縄の文化、蝦夷・アイヌの文化)に目を向け、日本文化を単一で均一のものと見ずに、その国際性・重層性・多様性に着目するという研究対象にかかわる意味である。このことによってはじめて、日本の社会とその文化遺産についての国際的視野に立つ研究が可能になる。まずは、外国の日本研究の中でも、英語圏のそれに比べると顧みられることの少なかった非英語圏の日本研究を取り上げる。
また、国内外の研究機関・研究者とネットワークの構築も必要である。ネットワークは研究情報をリアルタイムに共有することが可能となるからである。こうして、私たちの研究プロジェクトのキーワードは、「異文化」「非英語圏」「ネットワーク」「リアルタイム」ということになる。従来から日本文化の研究活動を展開してきた野上記念能楽研究所、沖縄文化研究所と共同でプロジェクトに取り組む体制を整えることができたばかりか、ネットワーク構築に関しては本学情報技術(IT)研究センター(IT関連分野の研究および教育を産業界と連携して進める拠点)、およびアメリカ研究所(米国シリコンバレーに設置した研究や教育を世界的な規模で行うための拠点)と連携することも可能となったので、国内外の研究機関・研究者とリアルタイムに研究情報を共有しつつ「日本学の総合的研究」を推進していく。

(2)テーマプロジェクトの概要

下記のテーマプロジェクトを設置して「日本学の総合的研究」を推進する。

テーマプロジェクト1:外国の日本学研究事

国外の日本研究機関と交流を深めながら共同研究を推進する。また、近年の日本研究の動向を調査して、その成果を国内の研究者の用に供する。

テーマプロジェクト2:アジアの中の日本学

アジア諸国との関係で日本の社会と文化が形成され変容されていく様相、また、それが逆にアジア諸国に影響を与えていく様相を総合的に考察する。アジア各国の日本研究機関・研究者との共同研究を展開する。

テーマプロジェクト3:古典文化と民衆文化

日本の古典文化は、各時代の社会構造に支えられて重層的に形成されてきた。したがって、正統に対しては異、純粋に対しては混交(雑種)を対置し、双方を相対化しつつ、日本の古典文化を民衆文化との関係からも問い直す。
古典文化の研究については野上記念能楽研究所の果たす役割が大きい。民衆文化に関しては、共同プロジェクト研究機関・研究者と連携しつつ独自の調査を展開し、リアルタイム配信で共同研究を展開する。

テーマプロジェクト4:風土が作る文化

く山の民・海の民などといわれるが、地域ごとの特色を育てた風土と文化、物と産業、人と物の地域への移動・交流、交差、それによる文化・文物の変容といったものを中心に探る。また、国家意識や国土認識など、日本人は日の列島をどう自己意識してきたかの歴史も探る。この分野でも、共同プロジェクト研究機関・研究者と連携しつつ独自の調査を展開し、リアルタイム配信で共同研究を展開する。

テーマプロジェクト5:日本の中の異文化

日本の歴史とは「ヤマト」の歴史のみではない。つまり、「ヤマト」のみでは済まされない蝦夷・アイヌ、琉球・沖縄の問題がある。ここでは、主として蝦夷・アイヌ、琉球・沖縄の研究を推進する。琉球・沖縄の研究については沖縄文化研究所の果たす役割が大きい。共同プロジェクト研究機関・研究者と連携しつつ独自の調査を展開し、リアルタム配信で共同研究を展開したい。

ワーキングプロジェクト:成果の情報化と活用

野上記念能楽研究所・沖縄文化研究所の資産の共同利用化をはかる。またテーマプロジェクトの成果をCD-ROM、ネットワークなどを通して共同研究に資する。また各テーマプロジェクト間の調整も図りつつ、当該組織の運営を担当する。

(3)研究成果の公表

内外の共同研究機関・研究者と提携して、シンポジウム・研究集会などを開催する。年に一回は全体的研究大会(シンポジウム)を開催する。それらを可能な限りネットワークを通じてリアルタイムで配信する。

野上記念能楽研究所・沖縄文化研究所の資産のデジタル化進行、研究利用化に合わせて、それを共同研究機関・研究者にネットワーク配信するととともに、学内LANに載せて共同利用する(著作権の問題がクリアされたものから順次学外へも公開する予定である)。また、成果・資産のCD-ROM化という選択肢も考えている。

研究成果を、成果報告集、紀要等、活字媒体の形で公表するだけでなく、CD-ROMないしネットワーク上でも公開する。