【開催報告】2014年度第9回東アジア文化研究会(2015.1.28)報告記事を掲載しました2015/02/01

「国際日本学の方法に基づく<日本意識>の再検討−<日本意識>の過去・現在・未来」
研究アプローチ(3)「<日本意識>の現在−東アジアから」
2014年度 第9回東アジア文化研究会

“日本現象”を追う一つの視座
−人類の行方を見据えて−


日 時: 2015年1月28日(水)18時30分〜20時30分
場 所: 法政大学市ヶ谷キャンパスボアソナードタワー25階B会議室

報 告: 足立原 貫(特定非営利活動法人 農業開発技術者協会・農道館理事長)
司 会: 王 敏 (法政大学国際日本学研究所専任所員、教授)

報告者:足立原 貫氏

 

1.状況
「人類の歴史は」との問いかけに、「闘争の歴史」「移動の歴史」「発明・発見の歴史」「ものづくりの歴史」「都市の歴史・都市化の歴史」等々、先人たちはさまざまな知見を残していったが、ここで確認されねばならないのは、「異なる生物が、併存・共存している自然界の様相を観察してきた歴史」である。
観察してきた自然界に「絶滅危惧生物」を発見し、その保護に手を尽くすのは、「みんな同じであるほうがよい」とする一方に、「みんなそれぞれ異なっているほうがよい」という判断があるからだ。
人類が、自分たちもこの地球上に生き続けている生物の一種なのだ、と自覚すれば、いま人類世界は人類自身を「絶滅危惧生物」のリストに登載しなければならないような事態に追いこまれつつあるのではないか、との危機感を抱かせられる。

2.暗影
「言語が異なる」「生活様式が異なる」まで許容し合っても、「思想が異なる」「宗教が異なる」となると、それぞれ継続されてきた相互のさまざまな「異なる・異なっている」を一切「拒否」し、その先の「抹殺」へ向かってしまう。この動向に歯止めがかけられなければ、人類を「絶滅危惧生物」のリストに登載しなければならないという話が“冗談”ではなくなる。
“冗談”にしてはならないとして課題にとり組む入り口は、これまで「進歩・発展」の手本とされてきた「現代先進国文明」の問い直しである。
現代の「先進国」と言われる国々の文明状況を通覧してみると、“工業化”“都市化”“基本的人権の尊重”の軌跡が見えてくる。
“工業化”は「モノづくりのチエとチカラの推進」。“都市化”は「暮らしの便利さの追求」。“基本的人権の尊重”は「人はみんな自分の生き方を自分で決める自由と権利を持っている」として、思想・言論・信教の自由などを「法」で定めている。
三つの要件が満たされ、工業化が進んでいてモノが豊富。都市化が進んでいて生活が便利。基本的人権が尊重されていて自分の生き方を自分で決められる。となると、“天国”ではないか。だから中進国や途上国は先進国を追う。しかし、先進国は決して天国ではない。
モノがあふれるとともにコトがあふれている。とんでもないコト、なんともやりきれないコト、ゆるせないコト。便利さが満ちてくるとともに、その便利さゆえの思いもかけなかった不便が続出してきて日常生活を息苦しくさせ、生きる道を絶たれてしまうことさえある。
社会の混乱や体制の腐敗や人心の荒廃、先進技術を駆使する犯罪、生存基盤をゆるがす環境問題、それらを追っていくと、人々が生き続けていくためにあってはならないことで、「先進国」は、とんでもない「先進」になっていることに気づかせられる。
随所で現代文明の潮流を問い直し、次世代へつなげていく実践への不断の努力を続けなければ、先進国は人類滅亡の先進役になってしまう、と思い知らねばなるまい。

3.異なっているままで
この国のこの時代に生まれ合わせ、一つの問題への異なる対応策での対立を、不毛の対立に終わらせず、新たな方途へ進展させてきた事例に、筆者たちの場合を寸描したい。
国土の70パーセント余が山林の島国である日本では欠かせない人工造林事業で、「下草刈り」の労務者激減対策に除草剤空中散布が実施され始めていた1974年夏、環境保全の視点から筆者らは猛反対運動を展開したが、「森林の育成」という大事の遂行への妨害に終わらせないため、問題の根源は、機械化・化学化の進展に頼って心身劣化へとつながる身体労働の“手抜き”を進行させてきている文明の流れにあると見てとり、全国の若者たちへ呼びかけ、自分たちの身体を動かして造林地の草を刈る運動を展開し、今日に至っている。
相手とは異なる意見の表示にヘリコプターが飛び立つのを妨害したり墜落させようとしたり、除草剤の製造工場を爆破しようとしたのではない。除草剤を空中散布するような文明状況への異議申し立ての実践で、生活スタイルも考え方も異なる者が、異なったまま日常性を脱して協力し合える方途を探り、共存をはかっていくほかに、人類の未来を描く術はない。

【記事執筆:足立原 貫(特定非営利活動法人 農業開発技術者協会・農道館理事長)】

 

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