【開催報告】2014年度第3回東アジア文化研究会(2014.6.25)報告記事を掲載しました2014/07/02

「国際日本学の方法に基づく<日本意識>の再検討−<日本意識>の過去・現在・未来」
研究アプローチ(3)「<日本意識>の現在−東アジアから」
2014年度 第3回東アジア文化研究会


    世界の日本観の変遷・・・
米欧アジアの知識人との対話から

日 時: 2014年6月25日(水)18時30分〜20時30分
場 所: 法政大学市ヶ谷キャンパス ボアソナードタワー25階B会議室
報 告: 会田 弘継(一般社団法人 共同通信社特別編集委員)
司 会: 王敏 (法政大学国際日本学研究所専任所員、教授)

 報告者:会田 弘継氏(一般社団法人 共同通信社特別編集委員)



「世界に良い影響を与えている国」を選ぶ世論調査がある。英BBC放送が25カ国を対象に行っている。2012年には日本は1位だった。今年は5位に下がった。
25カ国の調査の内訳を覗くと欧米アジアの多くの国が日本を好ましく見ている。ただ、中国と韓国でそれぞれ90%、80%が日本を否定的に見ており、両国が全体での日本への好印象の足を引っ張り、日本の順位を下げている。
最も近い中国・韓国と関係が良くない。これが日本のイメージの問題だ。歴史問題や領土問題が原因である。
最も重要な同盟国である米国の日本に対する印象はどうか。外務省が毎年行っている米国の対日世論調査によると、長期的トレンドとして、「日本を信頼できる友邦」と答える人は増え続けてきた。1960、70年代には30〜40%だったのが、いまでは80%、有識者に限れば90%に達する。ただ、昨年一般市民の評価が少し下がったのは、尖閣諸島をめぐる中国との争いに巻き込まれたくないという気持ちからかもしれない。
日米安保条約の重要性を問うと米市民や有識者の8〜9割が重要と見ていることが分かる。ただ「条約を維持すべき」という人は、昨年急に下がって7割程度になった。明らかに尖閣での衝突に巻き込まれるのを警戒している。
アジアで最も重要なパートナーはどの国かと米国人に問うと、かつては日本が断然トップだったが、最近は中国が日本を少し上回るようになった。ただ、その理由を問うと日本の場合は政治・経済・文化とさまざまな理由で大事なパートナーとなっているのに、中国の場合は経済的つながりが理由として突出している。やはり、アメリカは広い意味で日本を大切なパートナーと見ている。
東南アジア諸国連合(ASEAN)の主要7カ国での調査でも、最も信頼できる国は日本は33%で一位、二位米国の16%を大きく離している。中国は5%だ。インドネシア、ベトナム、タイでの支持が高い。
このように、日本は世界からかなり良い印象で見られている。世論調査の数字で見るとそうなる。しかし、こうした数字は急に変わるかもしれない。
もうちょっと奥深く日本への印象を探りたいと思って、2007年から昨年末まで、世界の81人の知識人にインタビューして、日本への印象や日本とのかかわりをじっくりと聞いてみた。リストに掲げたような人々である。政治家や文化人、日本研究者などだ。毎月新聞1ページ相当の記事を全国の地方紙に配信した。
なぜそうしたインタビューを行ったかというと、次のような問題意識に基づいた。ある国の国民の日本観はどう形成されるか。メディアに登場する知識人(政治指導者も含む)たちの発言などが大きな影響を与えているだろう。それらの知識人たちの日本観は往々にして、その国の日本研究者の日本観を参照しているだろうー。
最初の頃は、著名なアジアの政治家たちに会ってみた。韓国の金大中氏、シンガポールのリー・クアンユー氏、マレーシアのマハティール氏らだ。それぞれ、非常に印象的だった。日本について雄弁に語ってくれた。
金大中氏は、日本の植民地時代に教育を受けているが、自分に政治家として信念を据えてくれたのは、木浦商業学校時代の日本人の先生の言葉だった。「原則をもって生きよ」という教えで、波乱の政治家生涯でくじけそうになるたびにその言葉を思い出して、がんばったという。金大中事件の時は日本の知識人や市民が釈放を求めてデモなどの行動を起こしたことにも、深い感謝の念を抱いていた。
リー・クアンユー氏は、シンガポールの今日の発展の基礎を築くのを助けてくれたのは日本だという話を具体的にしてくれた。小さな都市国家を産業国家にするため、1970年代に石油コンビナート誘致を計画し、福田赳夫首相と日本の企業人の助けで、その第一歩を踏み出した思い出を語った。
マハティール氏は、同じ頃マレーシアの発展のモデルは日本しかないと考え、「ルック・イースト」政策を導入した。日本がデフレに陥った後も「ルック・イーストだ」と言う。「日本の失敗から学べ」と皮肉を言った。だが、東日本大震災が起きた時、すぐに日本を励ますため共同通信に寄稿をしてくれたのを忘れることができない。
インタビューの対象者で最も多かったのは米国人で22人に及んだ。自分の仕事の都合もあって、そうなった。時間がないので、米国人の日本観について気づいた点をまとめてお話しする。
最近の米国の日本学は、米国と日本の近代化は並行して進んできた、というような前提を持って、日本を見ているように思える。
米国の本格的近代化は南北戦争を経て始まる。日本は明治維新で近代化が本格化する。それ以前は両国とも「半近代」状態だった。
ともに1860年代に近代化を本格化させ、その後の産業発展過程は似ている点も多い。また帝国主義に入るのも、日本の場合は日清戦争、米国は米西戦争で、ともに1890年代だ。太平洋を挟んで近代化を進めた両国が第2次大戦で激突した。しかし、その後深い関係を結んだのは、興味深い。
こうした視点を、ジョン・ダワー氏やアンドルー・ゴードンといった日本学者との対話で学んだ。

【記事執筆:会田 弘継(一般社団法人 共同通信社特別編集委員)】

 

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