第2回研究会『「近代の<日本意識>の成立-日本民俗学・民族学の貢献」』(2012.10.12-13)

「国際日本学の方法に基づく〈日本意識〉の再検討−〈日本意識〉の過去・現在・未来」
研究アプローチ(2) 「近代の〈日本意識〉成立」
2012年度 第2回研究会
『日本民俗学・民族学の貢献』

 

日 時  2012年10月12日(金)−13日(土)

会 場  法政大学市ヶ谷キャンパス 九段校舎5階 第2会議室

司 会  ヨーゼフ クライナー(法政大学国際日本学研究所兼担所員・国際戦略機構特別教授)

 

上江洲 均 名誉教授(名桜大学)

赤嶺 政信 教授(琉球大学)

 

文部科学省私立大学戦略的研究基盤形成支援事業(平成22年〜平成26年)採択の研究プロジェクト「国際日本学の方法に基づく<日本意識>の再検討—<日本意識>の過去・現在・未来」のアプローチ(2) 「近代の<日本意識>の成立—日本民俗学・民族学の貢献」では、2012年10月12日と13日の二日間にわたって、第2回の研究会を開催した。
この研究会では、博物館とアイデンティティーの形成に関するテーマで、それぞれの専門家からご報告頂き、討論した。
北海道大学アイヌ・先住民族研究センター特任教授である佐々木利和先生には、東京国立博物館、文化庁、国立民族学博物館、そして北海道大学アイヌ・先住民族研究センターで勤務された経験から、「帝室博物館と土俗展示」というテーマで、戦前の帝室博物館(現在の東京国立博物館)における多民族国家のなかの少数民族の文化、なかんずくアイヌと沖縄の展示についてご報告頂いた。
名桜大学名誉教授で久米島博物館名誉館長の上江洲均先生には、「戦後沖縄の博物館」というテーマで、戦後間もなくの焼野原から、アメリカ海軍のハンナ少佐の手によって琉球の芸術・文化作品が集められ、最初の郷土博物館が出来上がるまでの歴史と、それがいかにアメリカの占領政策、また、沖縄の人々の自己認識に関係したのかをお話し頂いた。
北海道大学大学院教育学研究院准教授の近藤健一郎先生には、「1920〜1930年代の沖縄学の展開過程における沖縄県教育会附設郷土博物館の設立」というテーマで、郷土博物館と島袋源一郎の沖縄の研究との関連についてご報告頂いた。
また、神奈川大学経営学部准教授の泉水英計先生には、「琉球列島学術調査(SIRI)、1951-1954─米国人類学・歴史学と沖縄軍政」というテーマで、歴史学者であったカーと琉球政府立博物館(現在の沖縄県立博物館)の設立との関係について、今まで知られていない背景についてご報告頂いた。さらに、泉水先生にご報告頂いたアメリカの学術調査について、桜美林大学人文学系教授の中生勝美先生からコメントを頂いた。
琉球大学法文学部国際言語文化学科教授の赤嶺政信先生には、「戦後沖縄における郷土研究の動向」というテーマで、戦後の沖縄の人々の手による郷土博物館再建、琉球大学の学生による郷土研究会(民俗研究クラブ)、また、最初の講座ができるまでをお話し頂いた。その他に、沖縄文化協会、沖縄民俗学会、宮古八重山地方の郷土研究のあゆみを非常に細かく分析し、説明して頂いた。
今回の研究会の成果は、アイデンティティーの形成において今まであまり注目されてこなかった博物館の役割がいかに重要であったかを認識することができたことである。
第3回の研究会は、隣接諸科学のなかから、20世紀を通じての考古学、言語学のパラダイムの変化についてご報告頂く予定である。

【報告者:ヨーゼフ・クライナー(法政大学国際日本学研究所兼担所員・国際戦略機構特別教授)】

 

佐々木 利和 特任教授(北海道大学アイヌ・先住民族研究センター)、オイル シュレーガー 教授(ボン大学)

会場の様子