天皇・天皇制アルザスシンポジウムにむけての第1回勉強会(2008.6.14)
天皇・天皇制アルザスシンポジウムにむけての第1回勉強会
「中世における天皇について」
報告者 河内 祥輔 氏 (法政大学文学部史学科教授)
- 日 時 2008年6月14日(土)14時00分〜16時30分
- 場 所 市ヶ谷キャンパス 58年館2階国際日本学研究所セミナー室
- 司 会 安孫子 信 (法政大学国際日本学研究所所長)
2008年6月14日(土),14時00分から16時30分過ぎまで,法政大学市ヶ谷キャンパス58年館2階国際日本学研究所セミナー室において,「天皇・天皇制アルザスシンポジウムにむけての第1回勉強会」が開かれた.今回は法政大学文学部史学科教授河内祥輔氏から,「中世における天皇について」というテーマでレクチャーをしていただいた.
内輪の勉強会ということもあって10名ほどの参加者であったが,日本の天皇・天皇制の根幹に触れる「正統(しょうとう)」の考え方を,主に中世の代表的天皇論である北畠親房『神皇正統記』や慈円の『愚管抄』から引いて,詳しく説明していただいた.
すなわち,父子継承,血統に固執する「正統」の理念は明治維新で朝廷が解体されて消滅まで,日本の古代から,中世,近世に至るまで,わが国の皇位継承を導いてきたものである.この考え方から,同じ天皇にも「直系」と「傍系」の区別がなされ,またこの考え方故に,「正統」の選別をめぐって,政治の大動揺もしばしば生じてきたのである.
そしてこの「正統」の考え方は,天皇・貴族・武士は神々の子孫であるという神国思想と結ばれて,朝廷の由来や支配の正当性を担保するものとして機能した一方で,このように天皇は限られた血統からしか出ないということで,それゆえに天皇の資質は保証されない,天皇は貴族の補佐によってこそその地位を全うさせることができる,といった天皇と実効権力との乖離を言う立場をも可能にしてきたのである.
以上,今回の勉強会では,中世の天皇観の検討を通じて,日本の天皇・天皇制のあり方の根幹を再確認することができた.
【記事執筆:安孫子信(法政大学国際日本学研究所所長、文学部教授)】