第2回東アジア文化研究会「青潮文化論は可能か」(2008.5.14)

第2回東アジア文化研究会                                               「青潮文化論は可能か」

報告者    赤坂 憲雄 氏 (東北芸術工科大学大学院長・

               同大学東北文化研究センター所長)     

  • 日 時   2008年5月14日(水)18時30分〜20時30分 
  • 場 所    市ヶ谷キャンパス ボアソナード・タワー25階B会議室  
  • 司 会   王 敏 (法政大学国際日本学研究所教授)


2008年5月14日(水)、18時30分から20時30分過ぎまで、法政大学市ヶ谷キャンパスボアソナード・タワー25階B会議室において、2008年度第2回東アジア文化研究会が開催された。今回は、東北芸術工科大学大学院長・同大学東北文化研究センター所長の赤坂 憲雄氏をお招きし、「青潮文化論は可能か」という演題のもとで行われた。

 

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赤坂憲雄氏が語る「『青潮文化論』の可能性」

民俗学者・福島県立博物館館長・東北芸術工科大学東北文化研究センター所長の赤坂憲雄教授は、『青潮文化論』に啓発されて、環日本海文化をみずから歩いて考察された。青潮文化論とは市川健夫氏の説で、黒潮による文化伝播と並んで、対馬海流やリマン海流によるもう一つの文化伝播をいう。

列島の島々から韓国・済州島へ、海女、イカ神社、青椿、ブナ林、蹄耕、赤米など、もの、ひと、自然が青潮によって大循環している。赤坂氏によると、それらの事象は青潮文化の基層を成す一方で、ご自身の提唱する東北学ともつながっているとし、日本文化の多様性を示しているという。さらに、それは東アジアに広がり、混合し、文化的共生体を形成しているとされる。

赤坂氏は東北、日本、東アジアをひたすら往復し、活発に探索成果を発表されている。1996年に出された『東北学へ』の3部作(いずれも作品社)のほか、単著20点、共著7点、編著も多数。

柳田国男の思想の奇跡を辿りながら、その限界と可能性を問いつづけてきた。柳田とその民俗学は常民・稲作・祖先崇拝などを核とする<一国民俗学>に結晶した。それはあきらかに、近代に生成を遂げた<ひとつの日本>を、民俗学の名のもとに、下方から血肉化させるための知の営みでもあった。いま、その<ひとつの日本>の破綻がそこかしこに露出しつつある。そうして島国国家論・稲作中心史観・単一民族=国家論といった、<ひとつの日本>を支えてきた枠組みそれ自体を壊し、アジアに向けて開かれた<いくつもの日本>を浮き彫りにすることが求められている。」

赤坂氏の研究分野は民俗学にとどまらず、歴史学と思想学など幅広く及ぶ。『青潮文化論』の示す事例と現象を東アジア文化の広がりの中で比較・検証し、東北ないし日本文化論の新展開を開拓し続けている。

「柳田がついに語ることのなかった、もうひとつの東北像を模索しながら、<いくつもの日本>への扉」が開かれることを期待しつつ、「柳田以後の民俗学のあらたな可能性が芽生えるにちがいない」。そして、みずから『青潮文化論』の研究事例をあげて研究の方向性と手法を東アジア文化の次元へ大きく、広く展開させる可能性を示されたように思う。

 

(文中の引用は1995年、赤坂氏の山崎賞受賞記念講演より抜粋している)

            

                    【記事執筆: 王 敏(法政大学国際日本学研究所教授】