北京での活動報告(国際シンポジウム、中国の日本学研究機関との交流) (2007.10.20-23)

 

北京での活動報告(国際シンポジウム、中国の日本学研究機関との交流)

  • 日 時   2007年10月20日(土)〜10月23日(火)
  • 場 所    北京外国語大学東院北京日本学研究センター ほか

 


北京での活動報告(国際シンポジウム、中国の日本学研究機関との交流)

法政大学の学術フロンティア推進事業「異文化としての『日本学』を推進する研究プロジェクト」のメンバー(星野勉国際日本学研究所長、王敏教授、勝又浩教授、田中優子教授、筆者)は、2007年10月20日、21日に北京外国語大学東院北京日本学研究センターを会場にして開催された国際シンポジウム(主催:北京日本学研究センター)に参加した。続いて22日に中国社会科学院日本研究所と中国現代国際関係研究院、23日に北京日本学研究センターを訪問し、日本研究者の声を聴き、「日本文化への問いかけ」と題するワークショップを開催した。また、日本研究機関と法政大学の連携の在り方について意見交換を行った。訪問先の多大なるご支援により、実り多い相互学習の機会となった。以下、北京での活動の概要を報告する。

○国際シンポジウム「21世紀における北東アジアの日本研究」:

開会式では、日中両国の来賓から、日本研究の重要性とシンポジウムの成功を祈念する旨のメッセージが述べられた。シンポジウムの冒頭に、龍谷大学教授の濱下武志氏、オランダ・ライデン大学教授のウリエム・ヤン・ボート氏、天津社会科学院北東アジア研究所長の易明氏の基調報告が行われた。午後、「文化の往還−『中心』と『周縁』」というテーマで、5名のパネラーによる全体パネルディスカッションが行われた。2日目は、日本言語、日本語教育、日本文学、日本文化、日本社会、日本経済の6つの分野に分かれて、パネルディスカッションと分科会が行われた。発表者が多く、各自の発表時間が限られている中で、内容の濃い報告と質疑が行われた。日本文学分野の近現代文学1の分科会で、王敏教授が日本文学分野の近代文学1の分科会で「宮沢賢治の中の中国−宮沢賢治と『西遊記』」というテーマで発表をしたが、宮沢賢治の文学を事例として、日本精神文化の一側面を分析し、日本研究における総合的研究方法の可能性について語った。星野勉所長が「翻訳と日本文化の自立性」というテーマで基調報告を行った。日中両国の研究者を中心に、多彩な内容で、数多くの報告が行われた。報告のテーマとレジュメを見て、日本研究が、領域の広がり、深さの両面で大きく前進していることがわかった。

○中国社会科学院日本研究所訪問

中国社会科学院では、日本研究所の孫新副所長、日本研究者の方々とワークショップを行った。崔世広氏から、「日本研究の方法論について、欧米の研究者に学ぶべき点は多い。しかし、その多くは西欧モデルを抽出したものであり、限界もある。欧米の研究で日本(文化)固有の特徴として指摘されたものには、アジアでは一般的に該当するものが相当見られる。今後は、中国を始めアジアの諸国の視点を取り入れた方法を構築していくことが重要である」旨の発言があった。続いて、日本研究所の方々に、平素日本や日本文化について疑問に思っていることなどを出していただき、それを素材に意見交換を行った。参加された研究者は、日本の思想史、政治史、文化論、マスコミ、ジャーナリズム等を研究対象としておられる方々で、「日本人の考え方に影響を与えているものは何か」「伊勢神宮の式年遷都が20年を周期に行われる理由は何か」「伝統文化が現在の日本文化にどのような影響を与えているか」「比較文化研究と文化交流の可能性」「マスコミ、大手メディア、インターネットが日本社会に与えている影響は何か」等の項目をあげていた。それらの項目は、日本語文化圏に住む者にとっても、自画像の再確認にあたって大変興味深いものであった。

○中国現代国際関係研究院

中国現代国際関係研究院は、中国国務院直属のシンクタンクで、政府の政策立案に資するため、世界各国のデータを収集し、分析する機関である。研究院を訪問し、日本研究所の王珊副所長を始めとする方々と懇談し、中国の政策立案においてシンクタンクが果たしている役割について学ぶことができた。

○北京日本学研究センター

北京日本学研究センターでは、徐一平所長を始めとする日本研究者の方々と、法政大学・国際日本学研究所と北京日本学研究センターの今後の協力関係の在り方や学術フロンティア推進事業として計画している事業の内容やその展開を巡って意見交換をした。学術フロンティア推進事業では、東アジア文化研究をテーマにした研究会、ワークショップや国際シンポジウムの開催、資料集・論文集の刊行(外国語の翻訳版も含む)、日本文化や日本研究に関するデータベースの構築等の事業が計画されている。国内外の日本研究者が、様々な言語による日本学の研究成果を参照できることを目標にして、海外の日本研究者の氏名、プロフイール、研究業績に関するデータを収集・整理し、ウエッブで検索ができるようにすることや日本研究者を対象に、研究者の属する文化と日本文化のずれを究明するための調査を実施したい旨説明し、助言と協力を要請した。北京日本学研究センターでも、これまで中国における日本研究の状況について調査したことがあり、紙媒体で情報提供を行ってきたとのことであった。データベースの構築に伴う解決すべき課題がどこにあるか等について、中国の現状を踏まえた助言をいただくことができた。

【 記事執筆:杉長 敬治(法政大学特任教授)】

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