【開催報告】平成27-29年度科学研究費シンポジウム「英語版『東洋経済新報』とその時代」(2017.12.2)2017/12/04

 

平成27年度科学研究費若手研究(B)採択
「戦前の民間組織による対外的情報発信とその影響:英語版『東洋経済新報』とその時代」
シンポジウム

 

日 時:2017年12月2日(土)13時00分~17時30分
場 所:法政大学市ヶ谷キャンパスボアソナードタワー25階会議室B
報 告:鈴村裕輔(法政大学)
池尾愛子(早稲田大学)
上品和馬(早稲田大学)
イーサン・マーク(ライデン大学)
増田弘(立正大学)
司 会:鈴村裕輔(法政大学)
主 催:鈴村裕輔(平成27-29年度科学研究費助成事業(若手研究(B))
「戦前の民間組織による対外的情報発信とその影響:英語版『東洋経済新報』を例として」
[研究課題番号:15K16987]
後 援:法政大学国際日本学研究所

2017年12月2日(土)、13時から17時40分まで法政大学市ヶ谷キャンパスボアソナードタワー25階会議室Bにおいて、シンポジウム「英語版『東洋経済新報』とその時代」が開催された。
本シンポジウムは、平成27-29年度科学研究費助成事業(若手研究(B))「戦前の民間組織による対外的情報発信とその影響:英語版『東洋経済新報』を例として」(研究課題番号:15K16987)が、この2年半の研究成果を総括するために開いたものである。
今回は5名の報告者が発表を行い、その後質疑応答がなされた。各発表の概要は以下の通りであった。

(1)鈴村裕輔(法政大学)/英語版『東洋経済新報』の創刊と石橋湛山
石橋湛山が英語版『東洋経済新報』(The Oriental Economist: TOE)を創刊した理由を、1920年代から英語による情報の発信の必要性を試みていたという点に注目して分析するとともに、創刊を予告する社告と創刊号の序文の中で石橋の存在が強調されている背景を検討するとともに、石橋以外の主な寄稿者の顔触れから執筆者の選定の傾向を考察した。

講演者:鈴村裕輔氏(法政大学)

(2)池尾愛子(早稲田大学)/英語版『東洋経済新報』の経済記事について:1934~1960年
TOEの記事の特徴を経済記事に焦点を絞って検討した結果、TOEの特徴として各号で種々の経済統計が掲載されたこと、石橋湛山が執筆した月刊時評や社説が基本的に冷静なトーンで執筆されていること、海外からの寄稿者を擁したこと、ダンピング批判への反論が掲載されたこと、などが指摘された。

講演者:池尾愛子氏(早稲田大学)

(3)上品和馬(早稲田大学)/パブリック・ディプロマシーの観点からみた新渡戸稲造
政府の役職に就きながら日本の情報を対外的に発信した新渡戸稲造の取り組みをパブリック・ディプロマシー(PD)の観点から分析し、新渡戸が「事実・現実に基づく真実・心理の伝達」を重視して情報を発信するとともに、「物事が多面的に見える」ということがPDには不利であると考え、戦略的にPDを行ったことが明らかにされた。

講演者:上品和馬氏(早稲田大学)

(4)イーサン・マーク(ライデン大学)/Histories of Japan’s 1930s: Puzzling with a Troubled Past
1930年代の日本の政治や社会の状況を日本国内のあり方とともに国際関係の中から分析することで、軍国主義や全体主義が「上からのファシズム」といった限られた範囲での出来事ではなく広範な層を担い手として進展したこと、そして日本が政治、経済、社会などの変化が必然的なものではなくなりゆきに任せて生じた結果であることを指摘した。

講演者:イーサン・マーク氏(ライデン大学)

(5)増田弘(立正大学)/石橋湛山研究における英語版『東洋経済新報』の意味
TOEの成立の背景や影響を考えるとともに、TOEの論説記事の確認を通してTOEと『東洋経済新報』本誌との間の類似点と相違点を検討し、TOEの主要な記事であるLeading Articlesが本誌の複数の論説を合わせている可能性を指摘するとともに、第二次世界大戦中もTOEが当局の検閲を潜り抜けた考察された。

講演者:増田弘氏(立正大学)

以上の5つの発表を通して特徴や意義が多角的に検討されるとともに、質疑応答での意見の交換を通してTOEの印刷場所や流通の経路がどのようなものであったかというこれまでの研究で見過ごされてきた事項が確認されるなど、今後の研究に繋がる新たな論点も得られた。
報告者、来場者、さらに本シンポジウムを後援した法政大学国際日本学研究所の協力と支援に深甚なる謝意を表する次第である。

会場の様子

【記事執筆:鈴村裕輔(法政大学国際日本学研究所客員学術研究員)】

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